福島県いわき市のいわき平競輪場で5月3~8日にわたり、競輪界のGⅠ最高峰のレース「第76回日本選手権競輪」が開催される。地元の大舞台に挑む〝競輪伝道師〟佐藤慎太郎(45=福島)は、自身のみならず周囲の、またファンの大きな期待を背負って走る。輪界のトップで戦い続ける現在と〝引退論〟がここに明かされる――。

「やめない! やめないよ、何言ってるの!」

 今月は高木真備(27=東京)の突然の引退発表に始まり、ボートレース界では山崎智也さんの電撃引退もあった。今、引退という言葉についてシンタロウはどう思うのか。

「一人でも走ってほしい、って言ってくれるファンがいたら、走るよ」

 2人の引退については「どこに線引きしているか、が人によって違うからね」と判断の基準が大切だったとおもんぱかった。その思いは、痛いほどわかる。

 そもそも今は引退など考えている暇もない。地元いわき平で開催されるGⅠ日本選手権競輪、通称ダービーが控えている。ダービーはGⅠ最高格の大会で「この大会を招致してくれた、っていうので、いわき平の関係者の競輪への愛を感じる」と胸に刺さった。「でも、この年齢になると、急に仕上がるってわけでもないよ」――。

 45歳になったが、今年の活躍は目覚ましい。体がうずいている。2月静岡記念、4月平塚記念とGⅢを2回制し「う~ん、どこかで、地元でダービーがある、って思っているのかもしれないね」とテンションはビンビンだ。限りない闘争の人生。体が勝手に反応している。

 経験がそんな体を愛しつつ、制御している。充実一途の走りが、ファンの心をとらえている。今や〝慎太郎信者〟ともいえるファンが急増している。シンタロウが見せる走り、競輪への思いへの同調。競輪伝道師の真骨頂がある。

 15、16日にはオートレーサーの森且行とJKA補助事業の交付式に川口オートレース場といわき平競輪場で出席した。森は生死をさまよう大ケガから、ひたすら前を向き、5度にわたる手術、過酷なリハビリから逃げず復帰を目指している。

「森さんもオートのダービー(日本選手権)を勝っているし、オレも勝って励ますことができたらいいね。それで復帰した森さんを激励に行ければ…」

 人間同士が何かを伝え合うことが、シンタロウの人生のすべて。今回のダービーはそのすべてを爆発させる。

 ☆さとう・しんたろう 1976年11月7日生まれ、福島県出身。165センチ、80キロ。S級S班。主な実績=2003年GⅠ全日本選抜(高知)、2019年GP競輪グランプリ(立川)。数々の名勝負を繰り広げ、ファンから圧倒的な支持を集める〝競輪伝道師〟。