ついに辞退国が出た。北朝鮮の体育省はウェブサイト「朝鮮体育」を通じ、同国の国内オリンピック委員会(NOC)が3月25日の総会で東京五輪への不参加を決めたことを明かした。東京五輪の辞退を表明した国は、今回が初めてだ。

 国際オリンピック委員会(IOC)は「IOCは何度か求めたものの、残念ながら北朝鮮のNOCと電話会議を開くことができなかった。(不参加の)正式な申請を受け取っていない」とする広報官の談話を発表。「北朝鮮不参加」の一報を聞いた大会組織委員会の関係者は「何も聞いていない。寝耳に水だ」と驚きを隠せない様子だった。

 組織委内では不参加の理由について、様々な臆測が乱れ飛んでいる。ある幹部は「日本政府による制裁措置や日米首脳会談(16日)へのけん制だろう」と政治的な思惑を指摘する一方で、北朝鮮の国内事情とする見方もある。昨年夏、台風で大規模な農作物被害が発生した上に、新型コロナウイルスによって中国との国境が封鎖されて、食糧や物資が枯渇。関係者は「今はとても五輪どころではない状況だ」と分析した。

 ただ、北朝鮮サイドは辞退の理由を「新型コロナウイルス感染症から選手を保護するため」としている。これが本当の理由だとすれば、日本にとって由々しき事態だ。北朝鮮の辞退によって「東京はコロナが危険だという認識を世界に与えかねない」と懸念する声もあり、他の国や地域が追随する“ドミノ式ボイコット”が起きても不思議ではない。競泳の池江璃花子(20=ルネサンス)が白血病を乗り越え奇跡の東京五輪出場を確実にしたことで、ようやく“追い風”が吹いてきたとみられたが、五輪本番への道は変わらず混迷を極めそうだ。