兵庫県警暴力団対策課は6日、携帯電話販売店からケータイ1台をだまし取ったとして、詐欺の疑いで神戸市北区鈴蘭台東町、指定暴力団神戸山口組(本拠地・同県淡路市)組長の井上邦雄容疑者(68)を逮捕した。同日、自宅を家宅捜索した。容疑を認めている。

 神戸山口組は2015年8月、指定暴力団山口組から分裂して結成され、井上容疑者が組長となった。県警によると、分裂以降、神戸山口組組長の逮捕は初めて。

 神戸山口組からは今年4月、有力団体「山健組」(神戸市)の一部幹部などが離脱して新組織「任侠団体 山口組」の結成を表明。警察当局は、神戸山口組の「内部対立」とみており、県警は今回の逮捕で組織の実態解明も急ぐ。井上容疑者は山健組の組長も務めている。

 逮捕容疑は30代の知人女性と共謀し13年11月、神戸市灘区の携帯電話販売店で、井上容疑者が使用する他人名義のケータイの機種変更をする際、同容疑者が使うことを隠し、ケータイ1台をだまし取った疑い。

 他の携帯電話の通話履歴を捜査した結果、容疑を特定した。井上容疑者は6日午前、神戸市内の葺合署に出頭した。

 現在、各自治体の暴力団排除条例により、暴力団員は携帯電話契約や不動産契約、銀行口座開設、金融機関のローン契約など、多くの経済行為が規制されている。例えば、振り込め詐欺ではケータイ、アジト用のマンション、振込口座が必要となるため、暴力団の資金源を断つ名目だ。それにしてもトップが逮捕とは驚きだ。

 元暴力団員は「井上組長がケータイの機種変で逮捕というのは世間に衝撃を与えたでしょう。逮捕は神戸山口組分裂の実態を把握したいためという理由でしょうが、ヤクザになるとスマホを持てないというのがニュースになり、周知されたのが大きい。ますます若い不良がヤクザにならず、ヤクザの高齢化、衰退が進むでしょう」と指摘する。