安倍元首相銃撃から3週間…深まる「消えた銃弾の謎」

2022年08月01日 11時30分

安倍元首相が銃撃された現場(東スポWeb)
安倍元首相が銃撃された現場(東スポWeb)

 安倍晋三元首相(享年67)が先月8日に銃撃され、死亡した事件から3週間が過ぎたが、いまだ多くの謎が残っている。ここにきて、大きく騒ぎになっているのは“消えた銃弾”だ。安倍氏に致命傷を負わせたとされる2発の銃弾のうち1発が見つかっていないことが判明し、警察の捜査や対応から安倍氏の死因を巡って、再び物議を醸している。

“消えた銃弾”が最初に話題になったのは事件当日だった。安倍氏の死亡直後、会見した奈良県立医科大学の救急診療科部長の福島英賢教授は「手術している時に弾丸は確認できませんでした」と話した。

 その後、先月20日に自民党の治安・テロ対策調査会で、青山繁晴参院議員が警察庁に銃弾について質問したところ、1発は体を貫通しないで体内にとどまる「盲管銃創」が見られたとした上で、「弾は解剖で発見されていない」との回答を得たことを明らかにした。これに「なぜこれまで明らかにしなかったのか」と警察への批判が殺到し、諸説あった陰謀論がぶり返す事態となった。事件を巡っては、“謎の弾道”から複数人犯説が出る複雑な背景があった。当初、県立医大の会見では、銃創は安倍氏の首の付け根正面やや右側に2か所あり、一つはその弾道から首から心臓に向かい、大血管や心臓の心室に大きな損傷を与えたことによる失血死としていた。左肩の傷は、射出口の一つとみられるとしていた。

 安倍氏は、1発目の爆音を受け、振り向きざまに2発目の発砲を受けたとみられる。病院側の説明通りなら、正面に当たる首から心臓にかけて、上から下への弾道は不可解とされ、正面からの狙撃や倒れ込んだ際に誰かに銃撃された可能性がささやかれていたのだ。

 この病院側の説明を警察はすぐさま打ち消していた。死亡した当日夜に司法解剖が行われ、事件翌日の9日に奈良県警は結果を発表。首と左上腕部の計2か所に、銃弾が命中した傷があったとし、死因は左上腕部から入った弾が、左右鎖骨下動脈を損傷したことによる失血死と説明し、首のもう1か所の傷については銃弾によるものか分からないとした。病院側の見解とは異なるものだった。

 青山氏は調査会でのやりとりを自身のユーチューブチャンネルで公開している。警察庁側は死因や銃創について、病院側との見解の違いを認めた上で、命中した2発中1発の銃弾は押収し、その形状も直径10ミリ(1センチ)の球状と説明したという。もう1発の銃弾は弾道の解明にもつながる最重要証拠ながらも、見つかっていないことで、青山氏は「警察も頭を抱えている」とした。

“消えた銃弾”の謎について、現時点では、4つの可能性が考えられる。1つ目は銃撃現場からドクターヘリで救急措置や移動を繰り返している中で、銃弾が体内から外に出てしまった。2つ目は銃弾が直径10ミリと小さく、体内に入った際に粉々になって、大量出血とともに流れてしまった。3つ目は故意か偶然か何者かが捨てるか、持ち去ってしまった可能性。4つ目はそもそも盲管銃創の解剖結果が間違いで、銃弾が貫通していた可能性だ。

 自民党関係者は「奈良県警による事件現場で弾丸の捜索も含めた現場検証が行われたのは事件から5日たった後で、遅すぎた。銃弾が見つかっていないことにも『捜査に支障はない』と発言するなど捜査態勢は相当、お粗末なもの。捜査ミスも含め、何があってもおかしくない」と指摘する。

 安倍氏の演説現場を管轄していた奈良西署は今年1月に実弾5発を紛失したとして、男性署員が窃盗容疑で家宅捜索を受けるまでに発展した。結果は最初から5発が不足していた管理ミス。安倍氏の事件当日に奈良県警は調査結果を発表する予定で、ドタバタだった。

 青山氏は「勾留されている容疑者(山上徹也)以外から弾が発射されたとは考えていない。警察ごと陰謀をやっていて、隠したなら、こんなこと(銃弾が見つからない)を言うはずがない。弾がどこへ行ったのかも含めて、本当はどういうふうに撃たれたのかを解明しないといけない。警察は警察で苦しんで調べている」と話した。

“消えた銃弾”は永遠の謎になってもおかしくない状況だ。

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