【今週の秘蔵フォト】テレビの画面の向こうからお色気の権化のようなお姉さんが、指をくねらせながら「♪もうイヤ、絹の靴下は~。ああ抱いて嵐のように~」と歌う。ぼうぜんとして圧倒されたまま見ていた男性は多かったはずだ。子供には見てはいけない世界にも感じた。1973年6月、夏木マリは「絹の靴下」を大ヒットさせ、一気にトップスターとなった。

 73年8月13日付本紙には人気絶頂期の夏木のインタビューが掲載されている。見出しは「指で世に出る」。記者は冒頭から「グリーンのパンタロンにボディーシャツで長身を包み、目が大きく彫りが深い顔はグッと迫ってくる感じ。ステージに立つと右手を突き出して五本の指を交互に曲げる。細い指がまるで生きもののように動く」とすでに夏木の色気に圧倒されている。

「この指の動きで男性をマグネット(磁石)で引きつけちゃうの。初めは意識してやったわけじゃないんですけど、周囲の人が面白いって言うから、よしっていう気持ちでやったらウケちゃって。でも男性は私を遠巻きにして見ているだけなんです」と屈託なく笑った。

 元々、ジャニス・ジョプリンを目指すなどロック傾向は強かった。71年に本名でデビューするも、ヒット曲に恵まれず、73年に夏木マリとして再デビューして大ブレーク。「夏型と冬型があるならあたしは夏の陽性型。ソフィア・ローレンみたいな女優になりたい。自分で小屋を持ってミュージカルをやりたい」と夢を語っている。下積みも長かったが、ヒット後も病気などで苦労する時期も経験した。

 その後もドラマや映画で活躍。芸能人というよりはむしろ芸術家肌で90年代には舞台表現「印象派」を発表。世界各国の公演で高い評価を得た。同時に本格的なミュージシャンとしても幅広く活動(夫はパーカッショニストの斎藤ノヴ)。2015年には62歳で初の全国ライブハウスツアーも敢行。その後数え切れないほど大物ロックミュージシャンとの共演を実現させた。小西康陽、倖田來未、シシド・カフカ、仲井戸麗市らの大御所からもリスペクトされる。

 今年70歳。現在でも映画やドラマでは「かわいくてカッコいいおばあちゃん」役として欠かせない存在だ。衰えない美しさを支えるのは独特のロックスピリットなのかもしれない。