11月に入り、今年も残すところ2か月。世の中は新型コロナウイルス禍と政界再編、スポーツ界では東京五輪・パラリンピックというビッグイベントがニュースをにぎわせてきた。

 そんな世相を反映する「ユーキャン新語・流行語大賞」は毎年恒例。いよいよ今月上旬にはノミネート語が選出される。五輪が行われた年は必ずアスリートの名言などが候補に挙がるが、今年はコロナ禍による異例の開催となったことで選手の発言は控えめ。どちらかというと組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)の幹部が連呼した「安心・安全」、IOCのトーマス・バッハ会長を揶揄した「ぼったくり男爵」、または組織委の会長を辞任した森喜朗氏の問題発言「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などのワードが有力視されている。

 とはいえ五輪ワードはいまいちパンチに欠ける。そこで注目されるのは日本中に明るい話題を提供した米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平投手(27)だ。何といっても今年は打者として46本塁打、100打点、投手として9勝2敗、156奪三振という空前の成績をマーク。ア・リーグMVPが最有力にも挙がっており、大谷関連ワードは欠かせないだろう。当然、脳裏に浮かぶのは「二刀流」だ。しかし、このワードは大谷が日本ハムに入団した2013年にノミネートされている。同年は「今でしょ!」「お・も・て・な・し」「じぇじぇじぇ」「倍返し」など流行語が量産されたため「二刀流」はトップテンを逃してしまった。

 では、リベンジは可能なのか? ノミネート語を選出する「現代用語の基礎知識」の出版元・自由国民社および「流行語大賞事務局」を取材すると、今年は頭に「リアル」を付けた「リアル二刀流」が本命視されていることが分かった。選定に携わる関係者は「投打で世界を驚かせた年。本当の意味で真の二刀流が誕生したのだから、絶対に外せない」、同社編集局内のスタッフも「昨年はコロナ関連の言葉ばかり。暗いムードを払拭する意味でもリアル二刀流を推したい」と話している。

 ちなみに、今年引退した日本ハムの斎藤佑樹投手が早実のエースとして甲子園で活躍した2006年は「ハンカチ王子」がトップテン入り。そして翌年(07年)に大ブレークした男子ゴルフの石川遼の愛称「ハニカミ王子」が年間大賞を獲得し、変化形の言葉が〝本家〟を上回る現象が起きた。

 今回は名実ともに「リアル二刀流」に進化した大谷が、自身でバージョンアップさせた言葉で年間大賞に輝けるか。