廃虚マニアの間で“むち打ち観音”の異名で知られる「世界平和大観音像」(兵庫県淡路市)が6月から解体されることが決まった。高さ約100メートルにもなる巨大観音像はこの十数年、管理が行き届かず、野ざらしとなって、廃虚化。解体決定で廃虚マニア、巨大物マニアや探検マニアから悲鳴が上がっている。

 淡路島の世界平和大観音像は1982年に建設。首部分に設置された展望台が、まるでむち打ち治療用のギプスのように見えるため、この異名がついた。高さ約100メートルの像は当時、“世界一の高さを誇る観音像”として知られ、人気観光スポットになった。

 ところが次第に物珍しさがなくなり、来場客は激減。所有者で地元出身の資産家だったオクウチグループの創業者、奥内豊吉氏の死後、運営を引き継いだ妻が死去した2006年、経営が行き詰まり閉鎖。その後、放置されたままになっていた。

 コンクリート製の大観音像は荘厳だが、長年放置されていることから、近くで見ると老朽化が進み、外壁が剥がれ落ちてしまっている。20年3月末からは、国が所有者となり解体を検討していた。

 今回、解体工事を請け負うのは大阪市にある建設会社。8億8000万円で落札している。早ければ、6月上旬にも工事に着手するという。撤去完了まで1年8か月かかるとされている。

 愛媛県在住の廃虚マニアの男性は「もう5年くらい前のことになります。友人と館内の探索をしたことがあります。目的は、首の部分にある展望台に登ることでした。当時は、まだ入ることができたので、一気に上がることができましたね。展望台から見る景色は、もう最高でしたね。潮風が気持ちよかったです。こんな快適な廃虚は他にはありませんよ。その末期は、観光業界からもそっぽを向かれた施設でしたね」と振り返る。

 資産家だった奥内氏が集めた宗教的なコレクションもまだ残されていて、「B級感たっぷりの廃虚でした」(同マニア)。

 この観音像の台座部分となるビルの1階には、豊清山平和観音寺がある。表向きには宗教施設だったのだ。しかし、実際には、宗教施設というよりも資産家が手がけたミュージアムのようになっていた。

 工事が始まると、全体を覆い尽くすドームができるため、見られなくなる。2年後の23年には、完全に解体されてしまうことになりそうだ。