奈良市の奈良公園で2月7日未明、国の天然記念物に指定されている「奈良のシカ」の頭部を斧のような刃物でたたき切って殺したとして、奈良県警は2日、文化財保護法違反の疑いで三重県松阪市のとび職・吉井勇人容疑者(23)を逮捕した。

 県警によれば、吉井容疑者は「深夜にシカと遊んでいたら、いきなり車に体当たりしてきたので腹が立ち、持っていた斧でシカの頭を力いっぱい切り付けた」と供述しているというが、「体当たりしてきたシカと切りつけたシカは別だ」と奇妙な説明をしているという。

 シカの頭部には厚みのある刃物でたたき切ったとみられる5・4センチの傷跡があり、脳にまで達していたが、いまだ凶器は見つかっていない。真冬の深夜にシカと戯れて、さらに斧を持ち歩いていたという吉井容疑者の行動には不審な点が数多くあるが、今のところ薬物を使用していた形跡などはないという。

 しかし、供述どおり、シカが車に体当たりすることなどあるのか?

 シカの生態に詳しい専門家は、「野生のシカは繁殖期にオス同士で角を突き合わせたりするが、基本的に人を恐れて逃げる。しかし、人慣れしている奈良公園のシカは気が立っていれば突進してくることもあり、近年は観光客がケガをする事例も増えている」と話す。

 とはいえ、車に体当たりされたからと言って、斧でたたき切っていいわけがない。吉井容疑者はシカと戯れている最中に何か怒らせるようなことでもしてしまったのだろうか?