興収300億円超え「鬼滅」より「第3波」 〝ドラえもん〟苦戦に東宝幹部の分析は…

2020年12月15日 22時08分

配給元の東宝幹部による「鬼滅」大ヒットの理由は…

「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(公開中)は興行収入300億円を突破し、日本歴代興収1位の「千と千尋の神隠し」(2001年、興収316・8億円)を抜くのも時間の問題だ。そんな中、両作を配給した東宝は15日、東京・日比谷の本社に映画記者を集め、今年の興行成績を振り返った。映画会社最大手が〝鬼滅ブーム〟から学んだこととは――。

「千と千尋」の宣伝プロデューサーは、今や東宝の取締役。その市川南常務(54)は「鬼滅」の素晴らしさを細かく挙げ「日本人の琴線に触れるテーマ性があったことが、国民的ヒットにつながったんだと思います」と振り返った。

 加えて「ハリウッド映画の公開延期を受けて、スクリーン数と上映回数が最大に確保できたこと。(中略)コロナ禍の在宅によって、コミックの読者とアニメ視聴層がそもそも激増していた。そういう状況の中で映画を公開できたこと」も大ヒットの理由に挙げた。

 共同配給元で製作、宣伝も担当したアニプレックス社の功績も大きい。

「予告編とかテレビのCMの映像選びなども、非常にち密にやられて、我々も学ぶところが多いなと思いました」と市川常務。また「我々があんまりやらないところで非常に上手だなと思った」のは、先月14日から隔週で限定配布している来場者プレゼントだという。最後の配布となる第4弾は26日から行われる。

 動画配信もアニプレックスで、松岡宏泰常務(54)が感心しきりだった。

「いわゆる全方位外交で、様々なところにご自分たちの作品を提供されて、いろんな方がご覧になると。結果として、コロナ禍っていうこともあったかもしれませんが、そういった方たちの飢餓感が、映画館に足を運んでいただける大きな理由の一つになったかと思うと、良い作戦、戦略だったんだなぁというふうに感じています」

 松岡常務は「今回、配信という形でここまで大きくなった(興収につながった)というのは、やはり今後の我々が研究すべき課題なんではないかな」と感じているそう。

 会見では、先月20日に封切られた3DCG映画「STAND BY ME ドラえもん2」が「鬼滅」に〝押された〟んじゃないかという質問も。市川常務の分析はこうだ。

「同じアニメーションだから『STAND BY ME』を見に行かなくなるわけでもないと思いますし『映画見ちゃったからしばらく見ない』というよりも、面白い映画を見ると次にも(映画を)見たくなる方も多いようですし…。ですので『鬼滅』が影響を与えたというよりは、多少あるとすればコロナの第3波(の影響)というのが少しあったかなぁという気は致します」

 また「鬼滅」の〝独り勝ち状態〟という映画業界の現状を憂う記者には、松岡常務が映画人らしく、冷静な目でこう返した。

「映画というのは様々な作品があって、いろんなお客さんがいらして、そういう方たちが『鬼滅』も見るけれど、そうじゃない作品を見る方もいらっしゃるというのが、一番健康的な姿だと…。東宝が得意とする作品もあれば、そうでない作品もある。ですので、我々は映画業界をけん引する立場かどうか分かりませんが、お客さんが(映画館に)戻ってくるっていう作業では貢献したんじゃないかなと思ってます」

 新型コロナウイルス禍で今年は映画の上映、撮影スケジュールが大幅に狂った。その余波は来年も続きそう。そんな中での〝鬼滅ブーム〟は、映画界全体の救世主になったと言えそうだ。