中国の不買運動は逆効果? 世界的に人気の韓国の7人組男性アイドルグループ「BTS(防弾少年団)」が先日、米韓関係発展に貢献したとして米非営利団体「コリア・ソサエティー」から「ヴァン・フリート賞」を受賞した際、朝鮮戦争での米韓国民の「犠牲」に触れたことに対し、義勇軍が参戦し米韓両軍と戦った中国で、反発する声が出ている。中国国内では、複数の宅配会社がBTS関連商品の運送を中断するなど、波紋は広がるばかりだ。


 BTSの人気は世界規模だ。新曲「Dynamite(ダイナマイト)」が米ビルボードのシングルチャート「ビルボードホット100」で2週連続1位となったほか、所属事務所「ビッグヒットエンターテインメント」(ソウル市)が15日に韓国取引所に上場すると買い注文が殺到、時価総額が一時、11兆8800億ウォン(約1兆900億円)に達した。

 その後、株価は値下がりを続け、21日までの4営業日で30・62%下落し、終値は17万9000となり、22日は6日ぶりに反発し、終値は18万ウォン(約1万6600円)となった。株価は上場時の35万1000ウォンのほぼ半値になったが、韓国では希望の星となっている。

 そのBTSに中国が猛反発するきっかけとなったのが、リーダーのRM(26)の発言だ。今月上旬、米非営利団体「コリア・ソサエティー」が開いたオンライン授賞式でのことだった。

 RMは、今年で朝鮮戦争の開戦から70年となったと語り「(米韓)両国が共に経験した苦難の歴史と無数の男女の犠牲を忘れない」と話した。だが中国では、朝鮮戦争への参戦は「米国に対抗して北朝鮮を支援した」愛国的行為とされている。そのため、この発言に対し、一部の中国人が激怒。中国国内で〝BTS締め出し運動〟が起こり、BTSグッズを持っていたファンが襲われたり、複数の宅配会社がBTS関連商品の宅配を中断したりしている。

 朝鮮半島事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏は「今回のBTS発言を取り上げ、騒動にまで大衆を煽り立てたのは共産党機関紙『人民日報』の姉妹誌である『環球時報』であることを注視すべきです。今回のBTS叩き、おそらくは中国政府の意思が働いているのでしょう」と指摘する。

 これを裏付けるように、韓国メディアによると、BTS商品の運送を中断した宅配業者の1社は「わが社が拒否しているのではなく(中国の)海関(税関)総署でBTS商品が受け入れられていない」と話している。

 小泉政権時代、首相の靖国参拝や教科書問題のたびに、中国では日系デパートが襲われ、日本車が焼かれるなどの過激なデモが行われた。

 但馬氏は「あの反日騒動が政府主導による官製デモであることは当時からささやかれていました。それと同じことが今回は、韓国が誇るアイドルグループをターゲットに起こっているということです」と言う。

 中国と韓国の関係は弾道ミサイル迎撃システム(THAAD)配備問題からぎくしゃくしている。最近の韓国経済は自動車に続き、半導体産業もお手上げで、頼みの綱はBTSを筆頭とするエンターテインメントとコンテンツ産業ともいわれる。

 但馬氏は「エンタメと関連商品が中国市場から締め出しを食らうとなると、その打撃は計り知れないでしょう。ただ、中国にも熱心なBTSファンは多く、彼女たちからは今回のバッシングや非買運動への反発も起こっているようです。これが反政府感情に発展するという悲喜劇も十分考えられます。そういう意味でも、今回の中国の官製BTS叩き、思惑どおりにいくかどうかは今のところ未知数です」と指摘している。

 中国は行き過ぎた愛国心で墓穴を掘りそうだ。