日本を代表する脚本家・荒井晴彦氏が監督した映画「星と月は空の穴」(R18+)。過去の失敗から女を愛することを恐れながらも求めてしまう、こじれた感情を持つ小説家・矢添克二(綾野剛)。その矢添の心の中に踏み込んでいく大学生・瀬川紀子を新人俳優の咲耶(25)が演じている。
原作は吉行淳之介の芸術選奨文部大臣賞受賞作。荒井監督は「いつか映画にしたい」とかねて思っていたという。過去のトラウマから矢添は「精神的な愛」について可能性を探っていたが、たまたま画廊で出会った紀子を車で送る。奇妙な雰囲気の中、紀子は我慢できず車内でおしっこを漏らしてしまう。それをきっかけに2人は情事へと至るのだが…。矢添と紀子が絡み合う情事は刹那的で、激しく、美しい。その撮影について咲耶と荒井監督に話を聞いた。
――濡れ場は緊張しませんでしたか
咲耶 私、キスシーンも初めてだったんです。ほぼ素人に近いので、綾野さんがアドバイスをたくさん下さってものすごく助けられました。主演が綾野さんですごく幸運でした。
――アドバイスはどんなことを
咲耶 一番最初の時に、こういったシーンの時は「まずお互いの体温をとりあえず感じて、感じたままやればいい」というようなことをおっしゃってくださって。全裸のときは前張りとか役者やカメラで隠すものがあるんですけど「そういう技術的なことは僕に任せてくれたら大丈夫だから、何も気にしなくていいよ」と言っていただき、すごく気持ちが楽になって、演じやすくなりました。綾野さんは濡れ場百戦錬磨の方(笑い)なので、完全にお任せしました。
――挑戦でしたか
咲耶 必要な作品であれば自然なことだと捉えていたので、挑戦というふうには感じていませんでした。両親(父・吹越満、母・広田レオナ)がどちらもいろいろな作品に出ているので、いわゆる刺激的と言われる作品にも抵抗がないという面も大きいかと思います。
――咲耶さんは、この作品にどうしても出たかったと聞いています
咲耶 純文学の登場人物になってみたいという妄想に近い願望がずっと、中学生ぐらいからあったんです。その願望がまるっきり具現化された企画が目の前に現れて、ぜひ受けたいと思いました。
紀子のオーディションは難航したという。最後に現れたのが咲耶だった。作品の内容から、製作陣は180センチの綾野と並んだ時しっくりくるのではなく、アンバランスさを感じる女優を求めていた。
――監督に伺います。オールヌードはダメという女優さんは多いと思いますが
荒井監督 ほとんどじゃないですか(笑い)。だけどオーディションをやると脱いでもやりますという子は結構いた。でもなんかね、最近の子は背が高くてすらっとしてて(舞台設定の)昭和40年代ぽくないのよ。
――直観的なものを感じられたとも伺っていますが、咲耶さんの印象は
荒井監督 小さい(151センチ)なと。あと佇まいが今っぽくない。彼女と田中麗奈(矢添の馴染みの娼婦役・千枝子)がうまくいった。幸運でした。
――思った以上に?
荒井監督 初めてに近いのにやるなって感じでした。おしっこ漏らしてその後(情事に)行っちゃうところとか結構な感じなんですが。
咲那 そういえば、あのシーンで監督が「紀子、調子でてきたな」って言ってました(笑い)
荒井監督 ああ、言ったね(笑い)
――咲耶さんが受けなかったら
荒井監督 いやいや、そんなの恐ろしい想像だよ(苦笑い)
昭和40年代のペーソスが織り込まれた今作は、原作同様、現代社会では使うのをためらう言葉や表現など、今の映画にはない様々な試みがある。全編モノクロによる映像美の中、時に酷い言葉を発する矢添が紀子に振り回され負けていく姿は、可愛らしくもある。
――見る方にメッセージを
荒井監督 こういう映画もあるんだな、と。たぶん、あまり見た事ない映画だと思うんですよ。字幕もたくさんあるし、どういうふうに受け取られるのか、そこは心配ですけどね。映画をいっぱい見てる人には何となく許容されると思うけど。若い人で、あれっ?っと引っかかってくれる人がいればいい。
咲那 今、倍速で映画を見たりするじゃないですか。そんな時代だからこそ、私と同じ世代の人に見てもらいたい。コメディ的なくすっと笑えるところもたくさんあるので、あまり堅苦しいと思わないで、とりあえず見てほしいですね。
映画「星と月は空の穴」は12月19日から全国公開される。












