1990年代はCDが最も売れた時代であり、中心となったのが8cmCDだった。短冊形の独特なジャケットを覚えている方は多いはず。近年は再ブームも起きており、14日には200枚ものCDを網羅した「8cmCDで聴く、平成J―POPディスクガイド」(DU BOOKS刊)が発売された。監修に当たった音楽ライターの長井英治氏に8cmCDの魅力を聞いた。
1980年代後半に音楽フォーマットはアナログからCDに移行。その中心になったのが8cmCDだった。どんな経緯から独特のフォーマットは爆発的な支持を得たのか。
「8cmCDが初めてリリースされたのは1988年2月21日。短冊形のジャケットになったのは、従来のシングルのレコードの棚に2列に並べて置けるから。レコード店の力が大きかったんですね。CDの普及や8cmCDの発売で業界が潤い始めた。80年代はレコードが売れなかった時代でしたが、フォーマットが変わったことで音楽業界は音楽産業に変わった。テレビ業界もラジオ業界も一気に盛り上がりました」(長井氏)
8cmCDを中心にCD市場は大きく変化。膨大なものへと変化する。
「90年代はミリオンセラーが相次ぎ、CDが一番売れた時代。98年には6500億円市場にまでなっていた。エンタメ業界のピークだったと思います。2000年にはなくなるんですが、短冊形のジャケットには90年代の空気が詰まっている。日本特有の文化であり20世紀の遺産と言ってもいいと思います」(長井氏)
確かに短冊形ジャケットは日本固有の文化であり、世界に類を見ないアートワークだった。
「メーカーは最初、ジャケットを半分に折ることを推奨していたんですが、森高千里さんが『ザ・ストレス』(89年)を出した時に、美脚を見せるために短冊形全面に写真を掲載したんです。それから縦長全面のジャケットが定着した。アートワークとしてもおしゃれで優れたものになってきました」(長井氏)
バブルの時代、潤沢な資金をバックにドラマやCMとのタイアップが常識となり、ミリオンセラーが量産されて驚異的な数字を記録する。
「90年代にミリオンセラーになった8cmCDは174曲、オリコン1位は約300曲。95~97年だけでも1億6000万枚以上の8cmCDが売れた。この3年間が最盛期。ジャンル別に大きく分けると小室系、ビーイング系、渋谷系が3本の柱になりました」(長井氏)
それぞれの特徴はどんなものだったのか。
「小室系は90年代の中心的な大きなムーブメント。小室哲哉さんのプロデュースでヒット曲が量産された。安室奈美恵さん、TRF…。篠原涼子さんの『恋しさと せつなさと 心強さと』(94年)は女性アーティストで初めて200万枚売れたCDです。その後、97年に安室さんの『CAN YOU CELEBRATE?』も200万枚以上を売り上げました」(長井氏)
さらに渋谷系、ビーイング系がシーンを盛り上げた。
「渋谷系は局地的なムーブメントでしたが、僕は当時HMV渋谷店でバイヤーをやっていたので、そのシーンに立ち会えた。主要アーティストは小沢健二さん、小山田圭吾さん、オリジナル・ラブ、ピチカート・ファイヴなどです。そしてビーイング系。長戸大幸さんというスーパーバイザーがいて、ジャケットからミュージシャンまで一切外注せず、すべてビーイングの中で製作された。日本人向きの切ないメロディーにギターソロがふんだんに入る。J―POP=ビーイングかなと僕は思います。代表格はB’z、ZARDですね。おそらくB’zのことをここまでコラムで取り上げたディスクガイドはないと思います」(長井氏)
ちなみに史上最も売れた8cmCDが99年の「だんご3兄弟」(速水けんたろう、茂森あゆみ)で約300万枚。そして現在、8cmCD再ブームが訪れているという。
「数年前から若い世代が8cmCDでDJイベントをやるようになった。それがすごく熱い。その時期から昭和から平成レトロという流れになって、例えば女子高生が昔のガラケーや『写ルンです』などと同じように『8cmCDかわいい』というノスタルジックなブームができた。ディスクユニオンさんも全店舗で中古の8cmCDを大きく展開しているので、ぜひ平成独特の文化に触れてほしいですね」(長井氏)
200枚のジャケットと細かいデータを網羅した本書はコラムも満載で、もはや辞書のような圧巻さを誇る。この一冊を手に90年代を沸かせた、8cmCDのノスタルジックな魅力を味わってみたい。














