この時期になると、女優の牧瀬里穂(51)が出演したJR東海のCMを思い出す中高年も少なくないだろう。平成が始まった1989年のクリスマスシーズンに放送された、東海道新幹線のCM「クリスマス・エクスプレス」だ。当時17歳の牧瀬がブレークした伝説のCMで、恋人役を務めた元モデルが初めて取材に応じた。
牧瀬が演じる赤い服の女の子が、クリスマスプレゼントを抱えて駅を走り回り、帰省した彼氏を改札前の柱に隠れて待ち伏せ――遠距離カップルの再会を描いたドラマ仕立てのCMで、彼氏役を演じたのが元モデルの長澤ユキオさん(55)だ。
30年以上にわたって何十ものテレビ出演や取材依頼をすべて「こっぱずかしい」と断ってきたが、「今回がたぶん最初で最後」と取材に応じた。
長澤さんは知人の紹介で17歳の時、モデル事務所に入った。雑誌やCMの仕事を始め、22歳の時、オーディションで抜てきされJR東海のCMに出演。挿入歌として使われた山下達郎の「クリスマス・イブ」は不動のクリスマスソングになった。
撮影は89年秋、終電後のJR名古屋駅だった。長澤さんはCMのシチュエーションについて「東京駅でいう『銀の鈴』的な、名古屋駅のどこかで待ち合わせは決めてるけど、早く駅に行って改札前の柱に隠れて驚かそうとしてるんだと思ってました。当時スマホはないし、待ち合わせで遅れたら会えないかもしれないのに、サプライズで待ち伏せなんて…。今じゃ成立しないCMですよね」と話す。
長澤さんと牧瀬はCMで恋人同士だったが、演出上、絡みがなく、話らしい話もしないまま終わった。CM後、雑誌の対談で顔を合わせたものの、連絡を取り合うことはなかった。
長澤さんはJR東海のCM出演を機に、モデル業のかたわら俳優としても活動を開始。女優の観月ありさの主演デビュー映画「超少女REIKO」(91年)や、〝冬彦さんブーム〟を巻き起こしたTBS系「ずっとあなたが好きだった」(92年)など数本のドラマに出演し、93年に活動停止した。
2001年に復帰。別の芸名で1年ほどモデルや俳優として活動後、芸能界を引退して現在は裏方で映像プランナーの仕事をしている。
長澤さんは結局、JR東海のCMをテレビで一度も見なかったそうだが、行きつけの飲み屋の店主からネタにされることがあるという。
「店のデカいテレビ画面で、CMのユーチューブ動画を流されちゃうんですよ。『これよかったよね』って言ってくれる人もいれば、『これ(昔の姿)がこう(今の姿)なっちゃったのよ』とイジられて、俺が『あ、スイマセン』って謝るパターンも」
かつての〝恋人〟には「〝牧瀬さん、すごい演技だなぁ〟って、CMを見ると今でも思います。30年たっても人々に愛され続けるCMになるとは思ってませんでした」。この時期は特に、感慨もひとしおという。












