【直撃!エモPeople】あの人はどう苦難を乗り越えてきたのか。芸能界のご意見番、毒舌おネエキャラで知られる歌手・美川憲一(75)がデビュー55周年、コロナ禍を経て、次のステージへ意欲を燃やしている。109曲目の新曲「こころに花を」をひっさげたクリスマスディナーショー(23日、東京プリンスホテル)を開催。その半生を振り返るインタビューの<後編>は奇跡の復活劇、秘話盛りだくさんの告白となった。
「さそり座の女」などのヒットを飛ばしながら、美川は1977年、84年と大麻取締法違反容疑で逮捕された。
「這い上がるしかないところまで落ちてからの再スタート。しょせん、芸能界はさらし者なんだから、指さされても、それが現実と思うしかなかった。淡谷のり子先生は嘆願書まで出してくださって、裁判官には『歌い続けてください』と言われてね」
執行猶予(3年)が明ける前に地方営業を再開。舞台で歌っていると、酔っ払い客に汚いヤジを飛ばされた。そこで思わず出たのが、のちに美川の代名詞、流行語にもなった「おだまり!」だった。
「おネエ言葉で怒鳴ったら大爆笑。“これは商売になる”と思ったわ。最初は抵抗感があったおネエ言葉をそれから使うようになったの。毒舌も吐けるし、便利なのよ」
80年代後半、救世主が現れた。ものまねタレントのコロッケ(61)だ。
「前座をやってもらってたコロッケは私の誕生パーティーに子ワニの剥製にリボン付けて持ってきたのよ。私のこと、爬虫類だと思ってたのかしら。ちあきなおみさんや千昌夫さん、ブルース・リーのものまねをしていたコロッケに『もっといろんな人をやんなきゃ生き残れないわよ。私のものまねもやってよ』と言ったのが始まり」
89年「オールスター爆笑ものまね紅白歌合戦!!」(フジテレビ)で美川のものまねをするコロッケの背後から、第1号の“ご本人登場”で登場。美川は「いい迷惑よ。(コロッケの)衣装もこんな安物、私は着ないわよ」と毒舌を展開した。
「本当は感謝していたけど、ここは“逆張り”してやろうと勘が働いたの。番組の審査員の淡谷のり子先生はいつもぶすっとしているのに、手を叩いて大喜び。先生には20歳からお世話になってたから、出てよかったと思ったわ。コロッケには『こんなにウケたから、ジョイントやんない?』と私からすり寄っていって、今も続いている」
90年には「タンスにゴン」のCMでちあきなおみと共演。自転車に乗った美川が「もっと端っこ歩きなさいよ」と毒づき、話題になった。人気者として返り咲いた美川は91年、17年ぶりに紅白歌合戦に復帰。紅組の小林幸子とは2009年まで豪華衣装対決を展開した。公演を開けば、1ステージ1000万円、年間250ステージ、最高年商25億円を記録した。
するとまたも不運が…。美川のロールスロイスと乗用車が正面衝突。後部座席の美川は顔を6針縫うケガを負った。テレビ番組で訪れたパリでは現金500万円、3000万円の時計など計7500万円相当が入ったバッグを盗まれた。
「“あ~神様はこういう試練を与えるのね”と思ったけど“よし、盗られた以上のものをまた買おう”って奮起したの」
93年には所属事務所に空き巣が入り、現金や宝石など計2500万円相当が入った金庫が盗まれ、94年には豪邸の外壁タイルが剥がされた。
「くよくよしてても前に進めない。私、切り替えは早いの。もう一人の自分が、落ち込んでもはねのけなきゃという気持ちを出すの。そうしないと精神がむしばまれる。コロナ禍もそう考えるといい。若い世代の人たちには『自分自身を燃やしなさい』と言いたい。引っ込んでてもダメ。恋愛も友人も楽しんで、泣いて、恋い焦がれてもいい。『感情を出してエネルギーを高めなさい』ってね」
美川はLGBTQ+問題の支援イベント「TRANS DIVA TOKYO」の大会委員長を務めている。
「私は精神は男。LGBTQという分類もあまり考えてなくて、男でも女でも楽しめて生きるのが一番。大会に出場するパフォーマーは苦労している人も多い。その思いは受け止めてあげたい」
“伝説のオカマ”吉野ママ(吉野寿雄さん=91)はお手本だという。
「高倉健さん、長嶋茂雄さんなどにかわいがられた六本木のゲイバー『吉野』のママで文化人。おしゃれでよく食べて、明るく生きてらっしゃる」
半生を語るなかで、印象的だったのは「生まれ変わっても、男でも女でもなく、美川憲一にまたなりたい。今度は失敗なくね」という言葉だった。
☆みかわ・けんいち 1946年5月15日生まれ。長野県諏訪市出身。2歳で東京の母の姉夫婦に引き取られる。高校中退後、東宝芸能学校入学。64年「大映ニューフェイス」合格。65年「だけどだけどだけど」で歌手デビュー。66年「柳ヶ瀬ブルース」が120万枚のヒット。68年「釧路の夜」で紅白初出場。「さそり座の女」(72年)などのヒットが続き、74年まで7年連続紅白出場。77年、大麻取締法違反で逮捕、起訴猶予。84年、同法で2度目の逮捕、有罪判決。91年、紅白復帰。「おだまり!」が流行語に。2012年、事務所独立。20年、ブログ「しぶとく生きる」、21年、公式ユーチューブ開始。最新曲「こころに花を」が好調。23日にクリスマスディナーショー(東京プリンスホテル)を開催する。












