ボクシング界で〝世紀の一戦〟として注目を集めたWBA世界ライトヘビー級タイトルマッチ12回戦の王者ドミトリー・ビボル(ロシア)対〝カネロ〟こと4団体統一スーパーミドル級王者サウル・アルバレス(メキシコ)の試合で、ロシア国歌が流れなかったことが波紋を呼んでいる。

 7日(日本時間8日)に米ネバダ州ラスベガスで行われた一戦は、ビボルがカネロの挑戦を一蹴。3―0で完勝した。一方で、今回の試合はリング外でも大きな注目を集めた。ウクライナ侵攻に対する制裁として、ボクシング界ではロシアやベラルーシ勢の試合出場こそ認められているが、国歌や国旗の使用は禁止されている。

 今回の試合でも国歌斉唱時にロシアは流れず、メキシコと米国の国歌が流れた。さらにビボルの入場時には出身地のキルギス国旗が前面に打ち出された演出が行われ、選手紹介でも居住地である「カリフォルニアのボクサー」とアナウンスされるなどロシア色を一切排除した演出となった。

 これにかみついたのが、元WBOミドル級王者で現在は議員を務めるディミトリー・ピログ氏。露メディア「スポーツエクスプレス」で「個人的な意見としては当然の結果だ」と試合を評した上でこう糾弾した。

「ロシア国歌が流されなかったのは印象的だった。これは伝統であり、ボクサーがリングに入ると国歌が演奏される。〝争い〟があったので、彼らはメキシコと米国の国歌だけ歌った。残念ながらビジネスを基盤とするプロスポーツに政治が干渉しているのはいいい話ではない」とロシア国歌が流れなかったことに怒りをあらわにした。

 そして「この勝利はドミトリーだけでなく、ロシアと我々のスポーツ全体にとっても非常に重要な勝利だ」と強調。ビボルによる単なる勝利ではなく、ロシアが米国のスポーツを打ち負かしたと国家論を持ち出して〝政治利用〟した。

 注目の舞台で国歌が〝無視〟されたことで、ロシア側は怒り心頭のようだ。