東証スタンダード上場企業・KeyHolderの大出悠史代表取締役社長(40)、株式会社ゼストの高田裕充代表取締役社長(48)、株式会社ノース・リバーの北川謙二代表取締役社長(42)へのインタビュー企画第2回はアイドルグループ「乃木坂46」がKeyHolderグループ入りした経緯について直撃。またコロナ禍でコンサートやイベントの開催が難しくなった状況にどう立ち向かったのか。ライブ配信という新サービス成長の背景に迫る。

 ――20年6月にKeyHolderは映像コンテンツやライブコンサートなどのトータルプロデュースを行っている「株式会社ノース・リバー」の全株式の取得を発表。ノース・リバーはアイドルグループ「乃木坂46」の運営会社である「乃木坂46合同会社」の持分の50%を保有していることから、乃木坂46合同会社はKeyHolderの持分適用会社となり、グループインとなった(注・なお残りの50%を所有しているソニー・ミュージックレーベルズがマネジメントにおける主導的な立場として住み分け、乃木坂46を共同事業として運営を行っている)。どういった経緯からこういう形になったのですか?

 KeyHolder・大出社長 エンタメ事業に力を入れているKeyHolderグループとの相乗効果、シナジー創出という部分でお互いにとってプラスになるのではないかというところがきっかけです。実際に(ノース・リバーと)グループ各社との間で受発注も生まれている。いい形でエンタメを盛り上げていこうということにつながっています。

 ――さまざまな波及効果があった

 大出 ビジネスを行っていく上で常に上流、川上に立ちたいという思いがあります。芸能、エンタメの世界で事業を行ううえではやはりコンテンツホルダーにならなければならない。そこでSKE48に(グループに)入ってもらいましたし、さらに乃木坂46とのご縁もあったということです。PL(損益計算書)上も財務基盤も含めてさらに強固にエンタメを展開できるのではと考えました。

 ――コロナ禍で乃木坂46もSKE48も思うような活動ができなかった

 ノース・リバー北川社長 現実を受け止める中で何ができるかということで新しく生まれてきたのが配信という形でした。配信がいいのか、リアルがいいのか、どちらにもよいところやそれぞれにないところがありますが、ファンの方に新しいものを提供できるサービスが生まれたのかなと思いますね。

 ゼスト高田社長 SKE48は20年10月の12周年イベントとして配信ライブを行いました(注・SKEメンバー72人が出演し、13公演を開催。配信時間30時間以上、総楽曲数188曲というグループ史上最大規模の周年公演となった)。最大6500人が着席可能な「AICHI SKY EXPO」(愛知県常滑市)に話題作りとして毎公演お客さんを30人だけ入れて開催し、リハーサル期間も含め1週間借り切って行いました。あれだけ広さを取ったのもメンバー間の密を防ぐためでした。安全対策に配慮しながらの苦肉の策でしたね。

 ――会場費だけでも相当コストがかかったのでは

 高田 そこは配信チケットの売り上げや協賛を獲得して頑張りました。乃木坂さんもそうだと思いますがイベントがあるとグッズの売り上げが伸びるので。周年イベントの映像コンテンツを販売したりして結果的にはなんとか収支の見合う開催にできました。コロナ禍の中で鍛えられたのは営業力と、厳しい状況下でもどうにかして収益の上げられる形に持っていこうという社員の意識ですね。興行をやってあげないとSKEが死んでしまうという気持ちをみんなが持っていた。だからといって赤字でいいでしょうというマインドはなかったです。

 ――コロナ禍に対応するためいろんなチャレンジを行った

 高田 ゼスト所属のロックバンド「Novelbright(ノーベルブライト)」も20年デビュー前の全国Zeppツアーが全て中止になったんです。でも何かやっている姿を見せたい。僕はエイベックス出身なので派手なことやサプライズが好きなんです(笑い)。8月のメジャーデビューのときは、どうせだったら花火を上げようと大阪城ホールを借り切って無観客で無料配信と、メジャーデビュー発表をやりました。それが話題になって視聴者数もかなり取れました。もちろんコストを抑えるための努力もしました。コロナの中で確かに苦戦したけど、ゼストはどんな状況でも新しい届け方があるのではと考えられるチームになったのではないかと思います。アーティストもSKEのメンバーもそう。コロナだから指をくわえて待っているのではない。20年から21年にかけてはみんなの中にそういった意識ができていったのではないかと思います。

 北川 高田さんがおっしゃったようにコロナ禍の中でコスト意識というのはエンタメに関わる多くのスタッフに根付いたと思います。ファンを信じながらコンテンツを信じながらみんなで団結していく。一番怖いのが何かのタイミングでファンの方が離れてしまうこと。発信し続けなければいけないと思っていました。

☆おおいで ゆうし 2005年三井住友銀行入行。2017年株式会社KeyHolder入社。2022年3月代表取締役社長就任。

☆たかた ひろみつ 1997年エイベックス・ディーディー株式会社(現・エイベックス株式会社)入社。2019年株式会社ゼスト入社。2022年3月代表取締役社長就任。

☆きたがわ けんじ 2011年株式会社ノース・リバーを創業。NMB48の6枚目シングル「北川謙二」のモデルでもある。