人気アニメ「鬼滅の刃」の作品を連想させるデザインの偽グッズを販売し、正規品と混同させたとして、愛知県警は28日、不正競争防止法違反(混同惹起行為)の疑いで、横浜市中区のグッズ卸売業「レッドスパイス」社長の斉藤雪容疑者(52)ら4人を逮捕した。主人公・竈門炭治郎の羽織は黒と緑の市松模様、妹の禰豆子はピンクの麻の葉文様で、ともに日本伝統の模様だ。そのため、ちまたには「鬼滅」を思わせる偽グッズがあふれているが、今回、摘発された理由とは…。

 愛知県警は、同社が2019年11月ごろから、中国製とみられる偽グッズ約300品目を取り扱い、計16億円超を売り上げたとみて、被害の全容解明を目指す。

「鬼滅」の偽グッズを巡っては各地で商標法違反や著作権法違反容疑で摘発される例が相次いでいるが、同社が扱うグッズはタイトルロゴなどの商標が使われていないものが多かった。今回、こうしたデザインでも消費者が正規品と誤解する恐れがあるとして、県警は不正競争防止法違反容疑での立件に踏み切った。

 県警は昨年7月、県内のゲームセンターなどで同社の偽グッズが流通していることを把握。これまでに千葉、神奈川両県の倉庫など20か所以上を家宅捜索し、約3万5000点を押収した。

 4人の逮捕容疑は共謀して昨年4~8月、「鬼退治」の文字や黒と緑の市松模様があしらわれた衣類など244点を業者2社に計約12万円で販売した疑い。また、今年1月、税関の許可を得た上で偽グッズ566点を中国から輸入した疑い。

 あまりの人気ぶりに便乗グッズ、パクリグッズは星の数ほど出ている。 法曹関係者は「個人が鬼滅のキャラクターのポスターを複製したり、アクリルキーホルダーを自作したりして、ネットのフリーマーケットサイトで販売し、書類送検された事件は山ほどある。しかし、今回のレッドスパイスはキャラクターを直接使っておらず、ギリギリの線を狙ってパクっていたのだろうが、規模と金額が大きすぎる」と指摘する。

 炭治郎の市松模様も、禰豆子の麻の葉文様も日本伝統のものだ。そのため、集英社が商標登録出願したが、特許庁は5月に拒絶。その理由を「いわゆる『市松模様』の一種と理解される」「いわゆる『麻の葉文様』の一種と理解される」として「全体として、装飾的な地模様として認識されるにとどまり、かつ、その構成中に自他商品の識別力を有する部分を見出すこともできません」と通知している。

 ゲームセンターのクレーンゲームや雑貨店で、市松模様などのタオルやマスク、パーカなどを見かけた人は多いだろう。それらは「鬼滅」をイメージさせるが、スレスレなわけだ。

「レッドスパイスは真っ黒なトースターに『滅』という文字だけ記したものをネットで販売していましたが、その商品名は『鬼退治トースター 滅』。ほかにも緑と黒の市松模様、ピンク色の麻の葉文様に『滅』の文字をプリントしたタオルやパーカを『鬼退治シリーズ』として、ゲーセンに卸したり、ネット通販したりして、荒稼ぎしていたわけです」(同)

 緑と黒の市松模様に「鬼」「滅」などとプリントしたものは、明らかに「炭治郎」および「鬼滅」を思わせるわけで、アウトとなるのだろうか。

 今後、起訴されるのか、注目される。