いったい誰が選ばれるのか。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)による女性蔑視発言に端を発した辞任騒動を受け、後任選びが泥沼化している。新設の「候補者検討委員会」によって早ければ週内にも候補者が絞られる見通しの中、現時点で複数の名前が乱立。その選考には透明性が求められるが、実際は真逆になりそうな雲行きだ。政界を巻き込んだ複雑な人間関係が背後にあり、一部では〝犬猿の仲〟で知られる大物2人による「代理戦争」ともささやかれている。

 森会長の後任を選定する「候補者検討委員会」は御手洗冨士夫名誉会長(85)が委員長を務め、男女ほぼ同数の計10人未満の理事で構成される。現時点では次期会長候補としてスピードスケート銅メダルの橋本聖子五輪相(56)が本命視されるほか、競泳金メダルで初代スポーツ庁長官の鈴木大地氏(53)、ハンマー投げ金メダルでスポーツ庁の室伏広治長官(46)、アーティスティックスイミング(シンクロ)銅メダルで本紙が〝大穴候補〟と報じた組織委の小谷実可子スポーツディレクター(54)、バレーボール銅メダルで日本バスケットボール協会の三屋裕子会長(62)ら五輪メダリストの名前が挙がっている。

 早ければ今週中に検討委が候補者を絞り込み、その後の臨時理事会で新会長が誕生する見通し。とはいえ、一筋縄にはいきそうにない。一時は元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏(84)が後任に浮上するも、森会長から個別に指名されたことが発覚。世間から「密室政治だ」と批判されて白紙となった。

 この経緯を踏まえ、武藤敏郎事務総長(77)は「透明性の高いプロセスが不可欠」と強調したが、周囲では様々な思惑が渦巻いている。ある組織委幹部は「政府や国際オリンピック委員会(IOC)の意向を無視できるわけがない」と断言。実際にはあらゆる人間関係が慎重に考慮され、多方面に根回しされた末に候補者が決まるものとみられる。

 中でも一部関係者が重大な関心を寄せているのが「橋本VS小谷」の元女王バトルだ。〝犬猿の仲〟と言われる森会長、JOC前会長の竹田恒和氏(73)による「代理戦争」と目されているという。

「森会長の出身派閥(清和政策研究会)に所属する橋本さんは、いわゆる森ライン。小谷さんは竹田さんと深い絆がある。その森さん、竹田さんが招致時代から互いに嫌っているのは有名。森さんは著書の中で竹田さんをボロクソに書いていますからね」(組織委関係者)

 本紙が既報したように招致の段階で主流から外れた森会長は招致委理事長の竹田氏を敵視していたが、組織委の立ち上げとともに森会長がトップに座ると、両者の立場は逆転した。竹田氏は贈賄疑惑でJOC会長を退任し、森会長も今回の騒動で辞任。くしくも東京五輪の招致と開催に尽力した両トップが不祥事で共倒れとなる中、その無念を2人の〝女性後継者〟が晴らす――。こんな図式でみられているのだ。

 森会長に〝絶対服従〟の橋本氏は女性蔑視発言について一貫して踏み込んだ発言を避けて「親分」をかばった。一方で、小谷氏は竹田氏が贈賄疑惑でJOC会長を退任した際に慰留を熱望。人目をはばからず涙を流し、本紙に「できれば名誉会長として大会を迎えてほしい」と話していたほどだ。

 東京五輪まで残り約5か月。人事でモメている暇などないが、目の前のバトルが決着しないことには先に進めない。