コロナ自粛で虫の息・芸人救う“吉本金融”生活苦の若手が頼る実態は

2020年04月12日 11時00分

黒沢かずこ

「吉本ファイナンス」が“日干し寸前”の所属芸人を救う!? 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、芸能イベントの自粛が始まって1か月以上が経過した。この間、感染の勢いは衰えるどころか広がるばかり。志村けんさんの急死の後、緊急事態宣言が出されたが、お笑い界からも複数の感染者が出ている。先が見えない“自粛地獄”で、虫の息になっている売れない若手芸人を「吉本ファイナンス」(本当に実在する!)が、救っているという――。

 7日に出された緊急事態宣言を受けて、東京、大阪、福岡など7都府県の映画館や劇場などには自粛要請が出されたが、吉本興業は、これよりも前に、全国の直営劇場で行われるすべての公演を中止または延期にした。1か月以上前のことだ。

 その後、コメディアンの志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなり、吉本でもお笑いトリオ「森三中」の黒沢かずこが感染。「たんぽぽ」の白鳥久美子も8日に陽性反応が出るなど、終息の見通しは立たない。

 イベント再開に向けた兆しが見えない中で、吉本は無料のネット配信を開始したが、出番があるのは一握りの売れっ子芸人たちだけ。多くの若手芸人がネタを披露する場所と収入を失って“虫の息”状態。無残な悲鳴を上げている。

「1回の仕事でも稼げる大御所芸人はいいですが、若手は仕事がなくなるとまったく収入がない。今の仕事が反映される4~5月の給料は大変なことになる」とはお笑い関係者。

 売れているタレントも多数抱えているが、それ以上に売れていない芸人も大勢抱えているのが吉本だ。

「芸人も生活していかないといけないから、誰かに金を借りるしかない。でも、稼ぎの不安定な芸人に貸してくれるところは少ない」と前出の関係者が言う通り、崖っ縁に立たされている芸人がどれほどいることか。

 そんな芸人たちのセーフティーネットとなっているのが「吉本ファイナンス」だ。この会社、決してシャレではなく実在する。吉本興業の関連金融会社で、不動産や車などの高額の買い物をする際や、東京進出する際の引っ越し費用などを「吉本ファイナンスから借りた」と公言している所属芸人も多い。

「なんとか食いつながなくては生きてゆけない若手への貸し出しを増やしているそうです」(前出の関係者)

 吉本興業のホームページには「1998年設立」としっかり記載されているが、名前の割に実態はよく分かっておらず、「取り立てがえげつない」「借金のある漫才芸人が夜逃げしたら、相方が借金を背負わされる」といった都市伝説も浮上して、ネタにする芸人もいたほどだ。

 ただ、「意外に金利は良心的」だそうで、関係者によると、芸人だけでなく、吉本興業の社員も利用することができるという。

 吉本ファイナンスの融資を利用して、売れない芸人はなんとかしのいでいるが、関連会社とはいえ、借りたカネは返さねばならない。だが、その見通しすら立たない。

「そもそもバイトをして食いつないでいる芸人は山ほどいます。それが、コロナの影響で、バイトそのものがなくなっている状況です。長引いたら廃業をしなければならない芸人も出てくるでしょう」とある芸能関係者。

 芸人も苦しいが、実は吉本も決して楽な状況ではない。

「吉本は寄席から始まった会社ということに誇りを持っているし、実際に劇場公演をとても重視し、経営の中核に据えている。『吉本の芸人がテレビにいっぱい出てるじゃないか』と思うかもしれませんが、テレビのギャラなんて世間が思ってるほど、とんでもない金額ではないですからね。ラジオだとなおさら。それだけに、収益の柱である劇場公演で稼げないのは痛いんです」(芸能プロ関係者)

 新型コロナは老舗芸能事務所の体力までもどんどん奪っている。