ボートレースびわこのGⅡ「第8回レディースオールスター」が20日に開幕する。ボートレースファン歴46年の元天才ジョッキー田原成貴氏(65)にとって、当地は現役騎手時代から足しげく通った水面。その思い出深い地で行われる祭典を心待ちにする田原氏は、ある女性をキーパーソンに指名した。人呼んで艇界のまくり姫――。一度見たら忘れられないインパクト満点のレースに天才もぞっこんだ。

【田原成貴氏が熱く語る】先日、京都市にあるなじみの焼き鳥屋で、ボートレース好きの仲間と毎年恒例の新年会を行った。午後5時過ぎから店にわらわらと集まり、酒を飲みながら「外枠の△△は買いや」「〇〇のインは信用できんな」などボート談議に花を咲かす。中には言いたい放題、辛辣に批評するヤツもいたが、結局はみんなボートレース愛にあふれている。今風に言うと〝ボート沼〟にハマッた連中ばかりだ。

 お酒も回り出したころ、誰からともなく「今年も始めようか」という展開となった。自分が選ぶ「前年のベスト10レース」を発表し合うのだ。これは毎年やっている恒例行事で、SGやGⅠの優勝戦だけでなく予選や一般戦も審査対象になる。ボートファンにはたまらない選考レースだ。そして、オレが推奨したレースの一つが、今回出場している〝まくり姫〟こと高田ひかる選手が出場した昨年4月の津GⅠ開設71周年記念の優勝戦だ。

笑顔でびわこ入りした高田ひかる
笑顔でびわこ入りした高田ひかる

 あのシーンは今でも目に焼き付いている。GⅠ初優勝に王手をかけた1号艇・松山将吾選手に対し、スタートでのぞいた高田選手は2コースからジカまくりに出た。その懐を突いて差してきたのが桐生順平、峰竜太。艇界を代表するトップレーサー2人はバックストレッチで艇を並べ、1周2マークで峰選手が目の覚めるようなターンを見せて激戦を制した。オレが推奨した理由はもちろん峰選手の1周2マークの異次元のターンだが、あの激戦を演出した高田選手にも心を奪われたからだ。彼女の頑張りがなければ、峰選手のあのファンタスティックな神ターンは生まれなかっただろう。

 まず何と言っても2コースから握っていったこと。差す選択もあったと思うが、彼女はスリットでインに艇を寄せてプレッシャーを与え、果敢にまくった。その乗艇バランスも素晴らしく、回った後も舟が暴れずきっちり戻ってきた。さらにバックストレッチで内に艇を切り替え、2Mで先マイする執念。2着に敗れたものの、最後まで峰選手を追いかけ回して見せ場をつくった。男子トップ選手を相手に一撃必殺の破壊力を見せつけ、互角に勝負したのはアッパレ! 競馬でたとえるなら牡馬を力で圧倒する名牝。まさにウオッカやアーモンドアイのような魅力だ。おそらく、彼女のまくり見たさに「1票」を投じたファンも多いのではないか。

 余談になるが、今回の舞台はオレが新人騎手時代から何度も通ってきた水面。大先輩の福永洋一さんと1マークの上で一緒に観戦した日々が懐かしい。晴れた日は対岸の向こうに見える近江富士を眺めながら「あっちがトレセンかな」「オレの家はこっちかな」などと思いにふけっていた。まるで故郷のように愛着ある地で行われる女子レーサーの祭典。ぜひオレの思い出の1ページに、高田選手のスカっと爽快なレースを刻みたい。