あれは確か、1982年でしたかね。コント作家をやってくれた宮沢章夫さんが「俺の友達連れてきていい?」と、稽古場に多摩美術大学時代の同級生を連れてきました。「竹中っていうんだけど、知らない?『ぎんざNOW!』や『TVジョッキー』の素人参加コーナーで優勝してたよ」。宮沢さんが連れてきたのは、今や大物俳優の竹中直人です。

 僕らは「タケチュー」と呼んでました。初めて会った日、タケチューは芥川龍之介や松本清張の写真を持って顔マネするネタをやってくれました。似ていて面白かったですよ。その日から宮沢さんがネタを書き、僕らとタケチューで稽古する日が続きました。

 彼は実に不思議なところがあって、当時、弱くてお酒を飲めなかったのに、モノマネをすると飲めたんです。新宿のゴールデン街に一緒に行って、「原田芳雄」と言うと「バーボンの、ロックだな」とあの渋い声としぐさをモノマネしながら“クイッ”と飲んじゃう。「松田優作」と言えば「ボトルごとよこせ!」とまたモノマネしてグビグビといく。めちゃうまいモノマネを見せる代わりに、帰りはフラフラ(笑い)。その後、飲めるようになったみたいですね。

 あのころ、タケチューは「人力舎から誘われている」と言ってて、その後、実際に所属しました。僕らが一度サンミュージックを辞めた後、人力舎に入ったのは、宮沢さんとタケチューとのつながりからでした。

 今は何年かに一度会うぐらいです。「タケチュー」と呼ぶと「おお!」と芝居がかったリアクションをしてくれます(笑い)。タケチューと呼ぶ人、他にいないから、周りのスタッフには「ナニこの人たち?」という目で見られます(笑い)。

☆りっきー=1958年9月8日生まれ。京都府出身。本名・岡博之。81年に「ブッチャーブラザーズ」結成。サンミュージック初の所属芸人に。プロダクション人力舎に移籍後、92年に開校した東京初のお笑い専門学校「スクールJCA」講師を務めた。現在サンミュージック常務取締役。