【ビートたけし本紙客員編集長の新春毒ガス放談】上沼恵美子さんが昔、海原千里・万里で漫才やってた時はすごかったよ。うまいなあ、と思ったし。だけど今の女の漫才師と比べたらどうかというと、今の方がうまいよ。

 それはしようがない。長嶋茂雄さんがいくらすごいバッターだったといったってイチローにはかなうはずないし、落合博満の方がすごい。王貞治さんよりも大谷翔平の方がすごいバッターだし。

 でもスーパースターになるには時代背景もある。歌でも、もっとうまい歌手は出てるかもしれないけど、美空ひばりさんの時代にスターになれるかは分からない。石原裕次郎さんとか。いくら今漫才がうまくたって、時代背景が違うから。

 うまさから言えば、サンドウィッチマンがオレらの時代にいたら、根こそぎ持っていかれたんじゃないかと思うくらいうまいけど、当時の客がアイツらのネタを理解できるかどうか。ナイツのネタを理解できるかというと、スマホとかパソコンをイジってる時代じゃないからね。

 当時は、セント・ルイスが「キャッシュカードに残がない」って言ったのが一番新しいネタだったんだから。

 吉澤ひとみなんてのは事故を機に「芸能界を引退します」って言ってたけど、とっくに引退してたんじゃないのかよ。本人だけだよ、芸能界にいると思ってたの。

 将棋も話題になったな。藤井聡太七段はこれからだよ。トップクラスとやってどうなっていくか。羽生善治九段は無冠になったけど、羽生が全盛期の時は将棋を絵で見たって言ってた。盤面を見て、自分が心地いいと思った時は優位に立ってたって。それがコンピューターが出てきて、人間とコンピューターがやったら、圧倒的にコンピューターの勝ちになった。

 今はAI時代。人間の100メーター競走と、車のレースを比べるみたいなもんで、この先、はなっから人間とAIが将棋で戦っちゃいけないってことになるんじゃないか。次元が違うっていうか、同じテリトリーじゃないって。

 今のわれわれも未来のAIがわれわれをシミュレーションしているだけで、われわれは生きていると思っているのが間違ってて、マトリックスの世界なのかもしれない。