〝超異例〟の強行指名が、新監督人事ともつながってきそうな気配が漂う。22日に行われた「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で巨人は米球界挑戦を表明していた横浜高・織田翔希投手(18)を1位指名し、単独で交渉権を獲得した。だが、本人は渡米への思いを貫く構えで入団交渉は難航必至。そこで〝切り札〟として注目されるのが、新監督の有力候補として急浮上した球団OBの松井秀喜氏(52=ヤンキースGM付特別アドバイザー)の存在だ。
会場にどよめきが広がったのも無理はない。織田は15日にNPBを経由せず、米国で野球に挑戦する意向を表明したばかり。各球団が対応に頭を悩ませる中、2015年以来11年ぶりに監督不在でドラフトに臨んだ巨人が、あえて1位指名に踏み切った。
水野編成本部長は、織田の決断を尊重した上で球団内でも協議を重ねたことを説明。「日本のプロ野球のファンの方々にお見せしたい」と熱意をにじませ、「われわれは誠意を尽くしていくだけです」と交渉に臨む姿勢を示した。
もっとも、交渉権を手にしたからといって入団が決まるわけではない。織田は指名後も米国挑戦への思いは「全くブレません」と明言。昨年はソフトバンクが米スタンフォード大の内野手・佐々木麟太郎をドラフト1位で指名しながら、今年7月にマーリンズから8巡目指名を受けた本人が米球界入りを選んだ。巨人も長期戦を覚悟する必要がある。
そこで気になるのが次期監督の顔ぶれだ。元監督の高橋由伸氏が有力視されてきた後任候補の中で、ここにきて一気に存在感を増したのが松井氏。新監督人事の行方は、そのまま難航必至の織田獲得交渉にも直結する可能性がある。
松井氏は星稜高から1992年のドラフト1位で巨人入り。高卒でプロの世界に飛び込み、日本を代表する4番打者へと成長した。巨人で10年間プレーした後、2002年オフにメジャー挑戦を決断。翌年からヤンキースの主軸を務め、09年にはワールドシリーズMVPにも輝いた。現在も米球界の第一線を間近で見つめている。
投手と野手の違いこそあれ、高校からプロ入りし、日本球界で実績を積んで海を渡った歩みは織田に別の選択肢を示す上で説得力がある。いきなり米国に向かう道だけでなく、NPBで技術と経験を磨き、その先で世界に挑む道もある。実際にそれを成し遂げた人物が語りかければ、言葉の重みは球団幹部の説明とは違ってくる。
もちろん、本人の意向を無視した説得は逆効果になりかねない。松井氏は米国で勝負する魅力も厳しさも知る人物。新監督として直接交渉の場に立つ展開となれば、18歳が抱く夢を尊重しつつ、巨人で実績を積んでからメジャーを目指す野球人生の青写真を示すこともできるだろう。新体制の〝初仕事〟としては、これ以上ないミッションとなる。
直接渡米を希望しながら12年のドラフトで日本ハムに1位指名され、入団を決断した当時・花巻東に所属していた大谷翔平投手(32=現ドジャース)の前例もある。ただ、織田の決意が固いことも事実。交渉の勝算を次期監督有力候補の松井氏の存在だけで決めつけることはできない。それでも、今後仮に巨人とヤンキース双方の重みを知る「ゴジラ」の監督就任が実現し〝直接出馬〟するなら、18歳の心を揺さぶる材料になるかもしれない。いずれにせよ球史に残る〝強行1位〟指名の成否は、新体制の船出を占う試金石にもなりそうだ。












