旅行、テーマパーク、そして次に託されたのはプロバスケットボール――。旅行大手HISで32年間勤務し、ハウステンボスの再建にも携わった髙木潔社長(63)が今年6月にB.ONEのライジングゼファー福岡の経営トップに就いた。10月10、11日には照葉積水ハウスアリーナで愛媛オレンジバイキングスとのホーム開幕戦を迎える。畑違いの世界からやってきた新社長は、これまでの経験をどう生かし、クラブをどこへ導くのか。
髙木社長は、福岡市東区のアイランドシティでホテル運営などに8年以上携わってきた縁から、ライジングゼファー福岡の社長就任を打診された。思いがけない話に「びっくりしました」と振り返る。人生で巡り合った人との「ご縁はすごく大事にしています」とも語り、声をかけられた仕事は基本的に断らなかった。そして63歳、経験のなかったプロスポーツクラブの経営に飛び込む決断をした。
バスケットボールの競技経験はない。経営トップとして大切にするのは「選手ファーストであることはもう絶対」。選手が力を発揮できる環境を整える。中でも信頼を寄せるのが、福岡県出身で40歳のキャプテン・寒竹隼人だ。「うちのチームのレジェンドでもあるので、歴史も知っています」。率先垂範してチームを鼓舞する姿を評価し、「やはり見本になってほしい」と期待を寄せる。
今季は新たに始まったB.ONEで「初代チャンピオン。もうこれしかないですね」と頂点を見据える。コートの外にも一体感を求め、社内には誰かに引っ張ってもらうのではなく、一人ひとりが「自分自身が引っ張る」との意識を求める。
10月10、11日のホーム開幕戦で届けたいのは勝利だけではない。来場者に「もう1回来たい」と思ってもらうため、「感動と驚きを提供したい」と言葉に力を込める。試合に加えて演出やサービスも磨き、観戦体験の価値を高めていく。
その姿勢の根底には、これまでの経験がある。HISに32年間在籍し、ハウステンボスではHIS創業者の澤田秀雄氏に誘われ、4年間現地に住み込んで再建に携わった。そこで学んだのが、自ら動く「率先垂範」と「成功するまでやり続ければ成功する」の精神だった。観光、エンターテインメントで培った経験を、今度はプロスポーツに注ぎ込む。
髙木社長はスポーツが生み出す興奮も知る。大阪出身で、少年時代からプロ野球の近鉄ファン。2001年には大阪ドームで、北川博敏が代打逆転サヨナラ満塁本塁打でリーグ優勝を決める瞬間を目撃した。「もう大興奮ですよ。今でも忘れられない」。観客として「筋書きのないドラマ」に心を揺さぶられた。
今度はプロスポーツを届ける側だ。バスケットボールの魅力には「臨場感、一体感」を挙げる。屋内で天候に左右されにくく、試合時間もある程度見通せる。何より選手と観客の距離が近い。野球やサッカーなど多くのプロスポーツがある福岡で、その特性を武器にする。
視線は3年後にも向く。2029年3月にはアイランドシティで新アリーナの開業が予定され、クラブは2029―30シーズンのB.PREMIER参入を目指す。全国屈指の強豪校が集まる福岡で、若い選手がライジングゼファー福岡を目指す流れもつくりたい。今年1月、福岡大大濠高1年で特別指定選手として加入した白谷柱誠ジャックには「将来ほんと、ぜひうちに入っていただきたい」と期待する。福岡で力を磨いた選手がさらに成長し、新アリーナでプレーする。「それが最高のストーリーですよね」と思い描く。
B.PREMIERへの参入は、その未来への通過点だ。その舞台で頂点を争い、ファンや選手、スタッフが誇りを持てるクラブへ。「お客さまには『福岡のシンボルだね』って言われるような存在には、やっぱりなりたい」――。63歳で引き受けた新たな舞台。その先に見据えるのは、ライジングゼファー福岡が街に欠かせない存在になる未来だ。















