ボートレース多摩川のプレミアムGⅠ「第12回クイーンズクライマックス」(28日開幕)が間近に迫った。女子レーサー頂上決戦を前にして、ボートレースファン歴45年の元天才ジョッキー田原成貴氏(64)もテンションが上がっている。ボートレース多摩川は現役騎手だった若かりし日の思い出が詰まった場所。感傷に浸りながら、ティアラを戴冠する第12代クイーンの姿に思いをはせた――。

【田原成貴氏が熱く語る】ボートレース多摩川。故郷からはだいぶ離れているが、オレにとっては親戚のような場所だ。目と鼻の先に東京競馬場があるからだ。

 オレが20代の頃は今のように出走馬の直前輸送はなく、東京競馬場でレースに出る関西馬は3~4週間前から競馬場に入った。我々ジョッキーも同様で、春シーズンのオークス、ダービー、安田記念あたりは頻繁に自宅と府中を往復していた。ボートレースが大好きだったオレは、追い切りが終わると頭の中は舟券だ。「多摩川でひと勝負しましょうか」。食事を取った後、よく先輩騎手を誘って多摩川ボートへ遊びに行った。もちろん競馬に乗った翌日の月曜日も足を運び、舟券に興じた。いまだに「府中」「東京競馬場」と聞くと、条件反射で多摩川ボートの奇麗な静水面が頭に浮かんでくる。

 水面の印象はインも強いが、まくりや差しも利く。どこからも狙えるイメージだが、それはオレが人一倍まくり好きだからか。それ以上に印象深いのはレース場の雰囲気だ。地元のびわこ、尼崎、住之江といった関西レース場とはだいぶ違う。正面入り口に足を踏み入れると、何とも言えぬ洗練された都会の空気を感じた。「これが関東のレース場か」。外れ舟券やたばこの吸い殻が落ちたスタンドですら、不思議と瀟洒(しょうしゃ)に映った。関西弁のヤジも聞こえなければ、怖いおじさんもいない。オレにとって多摩川ボートは、ちょっぴりよそ行きの「プチ旅行」といった感じだった。

 今年はそんな昔の思い出とともにクイーンズクライマックスを楽しもうと思う。主役はやはり賞金トップの遠藤エミ選手(滋賀)だ。昨年、女子初のSG制覇という金字塔を打ち立てた後も安定した強さ。とにかく彼女のターンを見ると、ほれぼれする。特に今年のレディースチャンピオンの2コースまくりVは衝撃的だった。女子ボートレース界のパイオニアとして、ぜひ史上初の〝夏冬GⅠ連覇〟を達成してほしい。

 対抗馬は史上初の3連覇がかかる田口節子選手(岡山)。これほど長い間、第一線で戦い続けるとは恐れ入る。年を重ねるごとに強くなり、ピークはまだ先にあるんじゃないか、と思わせるほどだ。遠藤選手と田口選手、どちらが「史上初」を達成するか? そんな視点で見るのもまた面白い。

 他にも前半戦が絶好調だった長嶋万記選手(静岡)や〝まくり姫〟の高田ひかる選手(三重)も楽しみだが、個人的には守屋美穂選手(岡山)を応援したい。オレはどうしても彼女が気になって仕方がない。ターンやエンジン出しもトップクラスで、思い切りや大胆さもある。なのにあと一歩で頂点に立てず、最後の壁を乗り切れない。歯がゆくもあり、そんなミホちゃんがいとおしくてたまらない。同じ気持ちのファンは多いのではないか。

 それにしても時代は変わったものだ。オレが多摩川で遊んでいた頃は女子レーサーなどほとんどいなかった。その地で女子頂上決戦が華々しく開催されるなんて想像もしなかった。そんな感慨に浸りながら、今年最後の勝負に挑みたい。