ボートレース津のプレミアムGⅠ「第37回レディースチャンピオン」が1日に開幕。今をときめく女子レーサーたちが「女王」の称号を懸け、真夏の戦いを繰り広げる。ボートレースファン歴45年、競馬界の「天才」として知られる元ジョッキー・田原成貴氏(64)はドリーム戦1号艇の長嶋万記(静岡)に注目! 今年2月のGⅡレディースオールスターを制覇して〝無双状態〟に突入した彼女の勝利を信じて疑わない。

【田原成貴氏が熱く語る】長年ボートレースを見てつくづく感じる。近年は本当に強くて骨のある女子ボートレーサーが増えたものだ。競馬界でも藤田菜七子をはじめ、今村聖奈、永島まなみらの女性ジョッキーが活躍しているが、今のところ重賞に乗るのが精一杯。彼女らがGⅠで勝つのはまだ先の話だろう。一方、ボートレース界は競馬より30~40年も先んじて女子レーサーの採用と育成、女子戦の開催に取り組んできた。オレがボートレースを見始めたころは鵜飼菜穂子選手(愛知)が究極の〝男性社会〟の中で孤軍奮闘していたが、年を重ねるごとに女子選手が増加。あれよあれよという間に「女子戦」が誕生し、今では年末のクイーンズクライマックス、真夏のレディースチャンピオンという両軸が確立され、ボートレース界を大いに盛り上げている。

 かつては「華やかさ」のイメージが先行していた女子戦だが、そのレベルも格段にアップ。男子と交じって互角に戦えるレーサーも目立ち、実際に女子初のSG覇者まで誕生している。ボートに装着された赤字のネームプレートを見なければ、男子と見誤るような選手も増えた。いまや「女子」の枠を飛び越えて活躍しており、もう誰も女子レースを「色モノ」扱いしないだろう。そういう意味でオレはレディースチャンピオンの開幕が楽しみで仕方ないのだ。

 前置きが長くなったが、そろそろドリーム戦の話をしよう。本来は〝まくり姫〟高田ひかる選手(三重)に期待していたが、先のSGオーシャンカップ(児島)の初日に痛恨のフライング。この状況ではさすがに持ち味が発揮できないと考え、今回は割引せざるを得ない。となると、注目は1号艇・長嶋万記選手(静岡)だ。彼女の安定感は今に始まったことではない。女子ビッグレースでは常にV候補の存在で、まだGⅠタイトルがないことが不思議なくらいだ。旋回力、スタートの精度、ペラ調整力、エンジン整備力…どれを取っても平均以上。欠点がないことが武器と言ってもいい。

 ただ、レーサーとして〝何か〟が足りなかった。女子の頂点に立てる力量があるのに、上り詰めることができなかった。ここで「~かった」とあえて過去形にした理由はもうお分かりだろう。今年2月、GⅡレディースオールスター(蒲郡)を制覇。GⅠタイトルでこそないが、女子戦の3大タイトルの一つを手に入れたことで、彼女は間違いなく吹っ切れた。その後も優勝を重ね、すでに年間6V。オーシャンカップでは女子で唯一、準優戦に進出している。敗れはしたものの、近況の勢いを物語る成績だった。

 さらにオレがドリーム戦で彼女に期待した理由は、オーシャン3日目のイン逃げだ。4コースからコンマ0台のスタートでまくりに来た桐生順平選手をきっちりと受け止め、自身もコンマ10のスタートを決めて逃げ切ったのだ。男子一流レーサーに一歩も引けを取らない堂々たるレース。このシーンを見て、オレは今回のドリーム戦を彼女に託すことにした。

 2023年の長嶋万記は今までとは別人だ。きっとレーサーとして大事な何かを手に入れたはず。今大会、満を持してGⅠタイトルを手中に収め、先人たちが育ててきた「女王」の価値をさらに高めてほしい。