〝謎ポーズ〟に秘めた思いとは――。19日の立ち技メガイベント「THE MATCH 2022」(東京ドーム)でK―1のエース・武尊(30)に完勝した〝キック界の神童〟こと那須川天心(23)が一夜明け、激闘を振り返った。格闘界のみならず、スポーツ界、芸能界を巻き込み話題を呼んだ頂上決戦で、意外な注目を集めたのがゴング直前の那須川が腕をクロスした場面だ。あれはいったい何だったのか? 歴史的勝利の裏には、国民的スーパーヒーローがいたという。


 武尊との「キック頂上決戦」を判定5―0で快勝した那須川は、一夜明け会見に出席。「東京ドームという大舞台で武尊選手という最高の選手と戦えて、勝つことができてホッとしています。武尊選手には感謝しかないです」と安堵の表情を浮かべた。

 2014年7月にキックボクサーとしてプロデビュー。積み重ねた連勝記録を「47」(MMA、MIXルールを含む)とし、興奮のあまり一睡もできなかったという。「僕の中で、まだ6月19日です」と笑顔を見せた。

 そんな那須川が決戦直前に見せた、意外なポーズが話題となっている。殺伐とした空気が漂う中、先に呼ばれた武尊が右拳を突き出した。するとコールを受けた那須川は宿敵に視線を向けたまま、両腕を十字にクロスさせたのだ。

 那須川によれば、これは円谷プロが生んだスーパーヒーロー、ウルトラマンが必殺技「スペシウム光線」を放つポーズだったという。「俺、小さいころからウルトラマンが本当に好きで。ヒーローの中でも一番っていうくらいに好きなんですよ。人形も持っていたし。〝平成ウルトラマン〟から入って、古いのも見ていった感じです」と筋金入りのファンであることを明かした。

 しかもこのポーズには、那須川のある決意が込められていた。「3分で倒すっていう気持ちでやったんです」。3分といえば、ウルトラマンが地球上で活動できる時間だ。この試合で唯一のダウンを奪ったのは1ラウンド終了前で、3分が経過する直前だった。あの大一番で人知れず〝予告ダウン〟をやってのけていたとは、もはや形容する言葉がみつからない。

 インスピレーションを受けたのは「新世紀エヴァンゲリオン」や「シン・ゴジラ」で知られる庵野秀明氏が企画・脚本を務める映画「シン・ウルトラマン」だ。練習も佳境に入った5月中旬、公開直後の同映画を鑑賞。息抜きになったと同時にエネルギーを受け取った。「やっぱ、庵野さんってすごいっすよ…」と語る。

 そんな憧れのヒーローに劣らぬ戦いぶりで大一番に勝利した那須川は、これでキックボクシングを卒業。プロボクシングの世界に挑戦する。「どこまでできるか。それが分からないとイメージはできない」としつつも「チャンピオンになるっていうのは誰しも目標にあると思うので、そこに向かってやっていくのは確かですね」と強調した。

 ボクシングシューズを履いた〝シン・那須川〟の次なる戦いも日本中を熱くさせる。