もう“自分だけは大丈夫”という時ではないはずだ。スペインから20日に帰国した沖縄県の10代女性が新型コロナウイルスに感染していたケースが物議を醸している。女性は20日に成田空港に着きPCR検査を受け、検疫所から結果が出るまで待機してほしいという要請があったのにもかかわらず、同行の家族らと沖縄へ帰ってしまっていた。信じがたいことだが、世界中が混乱する状況でも危機意識の低い人はいるという。

 10代女性は休校期間を利用し、家族や親戚計4人とともに13日にスペイン・マドリードへ。20日に帰国して成田空港の検疫所で検査を受け、待機要請がありながらも同日中に沖縄に戻り、翌21日に感染が判明した。ほかの家族や濃厚接触者は陰性だった。

 スペインといえば14日に政府が非常事態宣言を出しているほど感染が拡大している国。外出は禁止でホテルやレストランも閉鎖しているという。現在、スペイン国内の感染者が2万人を超え、日本政府は同国の一部地域について感染症危険情報を渡航中止勧告を表すレベル3にしたほど。これは16日のことだが、女性が出発する以前からスペインでは感染者や死者が増えていた。行くのがためらわれるのはもちろんのこと、無事に帰国できるかどうかも不安な場所だ。

 1月下旬に中国・武漢からチャーター機で邦人が帰国した際に一部が検査を拒否して帰宅したことに多くのバッシングが寄せられたが、今回も同じ。ネット上では「危機感も責任感もゼロ」「強制力のない要請に意味はあるのか」「コロナにかかりにいったとしか思えない」と怒りを通り越して、あきれる声がいっぱい。

 中国から始まったコロナパニックだが、今では欧州や米国の感染者が急増。中国では21日に明らかになった46人の感染者のうち45人が英国やスペインなど海外を訪れたことのある人たちだったという。

 こうした事情を反映して、日本でも海外から帰国して感染が発覚するケースが相次いでいる。神奈川県藤沢市の20代男性もスペインから帰国後の21日に感染が判明。奈良県ではメキシコから帰国した40代女性が感染。ほかに英国、フランス、イタリアなど欧州各国、フィリピンなどアジアからの帰国者にも感染例が出ている。

 日本では東京都が花見の自粛を呼び掛けているが、海外ではイタリアやフランスなど外出そのものが制限されている地域もある。トルコは外出自粛どころか、65歳以上や慢性肺疾患などの持病がある人の外出を22日から禁止した。20日に外出禁止令が出たアルゼンチンでは、バイクで大陸縦断の旅をしていた日本人の60代男性が逮捕されてしまうほど徹底している。

 こういう状況にもかかわらず、あたかも“自分は大丈夫”と言わんばかりに行動してしまう人が後を絶たない。

 ある風俗嬢は「東南アジア帰りというサラリーマンが来たんです。大丈夫なのかなと慎重に話してみたら、その人は『家族にも近づかないでと言われてる』って言うんですよ。友達も相手にしてくれないから寂しいって言ってたけど、それで風俗に行こうっていう神経が分からない」と暴露。その場で風俗嬢の方からキャンセルしたという。

 災害が起きたときに「自分は大丈夫」と過小評価してしまうことを「正常性バイアス」というが、まさにそんな感じだ。いくら自分自身が感染に気を付けていても、危機感の低すぎる人間が周囲にいたら対策も水の泡になりかねない。