日本高野連は20日、オンラインで運営委員会と理事会を開き、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、8月10日開幕予定だった「第102回全国高校野球選手権大会」(甲子園球場)の開催中止を決定した。夏大会の中止は戦後初。会見に臨んだ高野連の八田英二会長(71)は「残念ながら中止の選択をせざるを得なかった。苦渋の決断だった」と話した。選抜に続き、球児たちはまたも戦わずして涙をのむ形となった。

 八田会長はマスク越しにもわかる沈痛な面持ちで「球児の夢実現の手を差し伸べ、成長に貢献するのが高野連の使命。その球児のみなさんに苦渋の決断をお伝えする悲しい日となった。選抜大会に続き、開催中止を伝えるのは断腸の思い」。特に目標を断たれた3年生に対して「部活動の集大成の場がなくなる。モチベーションをなくし、心が折れる思いかもしれない」と案じた上で「大会出場を目指した球児という栄冠は永遠に輝く。自信と誇りを胸に新たな一歩を踏み出してほしい。心の揺らぎに打ち勝ってほしい」と呼びかけた。

 緊急事態宣言が14日に39県で解除され、感染者数も一時と比べると減少傾向にある。インターネットで開催を訴える署名活動が行われるなど、結論を出すのは時期尚早との見方も出ていた。とはいえ、まだ多くの学校が授業、部活動再開のメドが立っておらず、6月中旬からの予選を経て8月上旬までに全代表校が揃うには準備期間が足りない。地方大会の球場使用やスタッフの人員の問題、宿泊、長距離移動による感染リスクも懸念され、さらに第2波、第3波の心配もあった。

「医学的な見地、交通手段、無観客も含め、あらゆる可能性を考えて吟味した」(八田会長)というが、見えない敵との戦いにまたも白旗を掲げるしかなかった。また、先送りされている選抜出場校の救済措置についても「現時点でコロナの終息を図りかねている状況。選抜関係のことも考えられる状況にない」(主催者関係者)とした。

 今後は各県が独自の地方大会開催に向け動き出すことになる。これも感染者数に地域差があることから足並みが揃わない可能性があるが、せめて「大会」という目標があれば、3年生も前向きになれるはず。八田会長は「各地区の高野連が総合的な判断で自主的にされること。お任せしたい。ガイドラインなど相談があればアドバイスはさせてもらう。財政的な支援もさせていただく」と協力は惜しまない考えを示した。“甲子園ロード”は断たれても、大人が知恵を絞り、3年生に最後の舞台を用意してあげてもらいたい。