【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「野球においてADHD(注意欠如・多動症)はスーパーパワーだと思う」と言ったのは、ギャレット・ミッチェル。1型糖尿病(T1)を抱えながら今年のポストシーズンをプレーする少なくとも3選手のうちの一人だ。
前回のペイトン・トーリがレッドソックス番記者の推しなら、彼はブルワーズ番記者の推し。9歳から自分の血糖値と一生付き合っていくことになった彼は、人より少し早く大人になることを強いられたのかもしれない。気持ちいいあいさつに始まり、会話にもこちらを構えさせない軽快さがある。
「家の中にいてあまり何もしていないと、考えごとの時間が増えるんだよね。特定の何かというわけではなく、ただ考え続けている」。オフの過ごし方の一つとしてここ数年、外に出て散歩やジョギングでメンタルリセットを心掛けているという話の中で、中学の時にADD(注意欠如障害。現在はADHDに含まれる)と診断されたと教えてくれた。ジッとしている方が休まらないのだと。
「座っていると、自分の内側に向かいがち。外にいたら新鮮な空気を吸って、景色に刺激をもらえる。それが自分にとってメンタル的にすごく助けになるんだ」
笑いがこぼれたのは「外に出られないと、頭の中で何が起きるの?」と質問した時だった。
〝お願いだからやめて〟と言わんばかりにハッと息を止めて、大きく吐き出し「シーズン中は日々起きることについて、いろいろ考えちゃう。具体的なことを能動的に考えているわけじゃなくて、ただ脳が止まらないんだ」。ギャレットはT1を抱えていることを、ハードルと捉えていない。
「母ともよくその話をするんだけど、T1は『ニューノーマル(新しい普通)』。もちろん人生が一変する出来事であったけど、どう付き合って生きていくかを見つけていっただけで、やりたいことをやめるものではないんだ。いわゆる健康管理。食事とか準備に気をつけている人はたくさんいるでしょ? 僕も何でも食べられる。ただ、適量を守って血糖値がしっかりコントロールされていることを確認する必要があるだけ」
キャンディーを食べるなら1つずつ。発症当初、母シャノンさんが慌てることなく夜中に血糖値を何度もチェックしてくれた。それを見てきたギャレットは両親と一緒にできないことよりも、できることにフォーカスする姿勢を身につけていった。
完全に管理することは難しい。ダブルヘッダーでエネルギーを使い過ぎ、極端な低血糖に陥ったこともある。今年9月の試合中にはインスリンポンプの注入部分が壊れ、慌てて付け替えて打席に駆け込んだ。その打席でキャリア初の満塁本塁打を放ってしまったのだから肝が据わっている。
ADHDも付き合い方次第だ。「原因が何か分かるまでは、特に学校が大変で。頭が悪いというより、何かをする集中力が続かなかった。座って本が読めない。スポーツをするとか、外に出るとか、とにかく常に動いていないとダメ」。
集中できるのは20~30分。それなら宿題をやる時は、20~30分おきに立ち上がって少し歩き回ればいい。
「考え過ぎちゃう時もあるけど、すごくクリエーティブにもなれる。何かをしてても、ふと思いついたことを膨らませられる。ADHDはもろ刃の剣だと思ってるよ」
ギャレットは自身の特性を、野球では強みだと受け止めている。
「良かったことも悪かったこともすぐに切り替えて、ページをめくり続ける競技だからね。最高の選手ほど、試合の良しあしに執着しない。アスリートの差が出るのは、体よりも精神。プロスポーツをやってる人は、みんなスーパーパワーを持っている」
スーパーパワーがギンギンの10月の野球も、残すところあとわずかだ。
☆ギャレット・ミッチェル 1998年9月4日生まれ、カリフォルニア州出身。2017年のMLBドラフト14巡目(全体411位)でアスレチックスから指名されたが、大学に進学。20年の1巡目(全体20位)でブルワーズに入団。抜群の身体能力で俊足を生かした外野の守備範囲は広大。今季はキャリア最多の145試合に出場して11本塁打。ドジャースとのリーグ優勝決定シリーズでは、第3戦と4戦にソロを放った。188センチ、104キロ。














