ボートレース徳山のGⅠ「徳山クラウン争奪戦開設70周年記念」は6日、準優勝戦が行われ、優勝戦に駒を進めるベスト6が決まった。ボートレースファン歴45年の元天才ジョッキー田原成貴氏(64)は勝ち上がったベスト6をじっくり見定め、1号艇・菊地孝平(静岡)に本命◎を打った。理由は明確だ。ボートレーサー、いや全ての公営競技レーサーにとって「命」ともいえるスタート力。その能力がハイレベルに備わっている男に全てを託す。
【田原成貴氏が熱く語る】スタート巧者。そんな言葉では物足りない。菊地孝平選手のスタート力は大げさではなく、ボートレースの殿堂級といっていいだろう。
今大会も平均スタートタイミングはコンマ09と抜群の精度。さらに準優12Rではド肝を抜かれた。インからコンマ10のスタートを切っただけでなく、なんと他艇がすべて30~40台。1艇だけボート1つ分以上も前にいく〝独り旅〟だった。自分のスタート勘に絶対的な自信がある表れ。そんな象徴的なレースであった。
一般の方にとってコンマ01とは刹那の世界。これを正確に見極めることなど奇跡に近い。たとえるならすし職人がシャリをつかんだ瞬間に数粒の違いを感じるような神業だ。恐らく菊地選手はスタート時の1秒間が十数コマにも見えているのではないか? 彼の頭の中を漫画で描くとしたら、スタートのシーンだけで何ページも割くことになるだろう。さらに言うと、菊地選手は研ぎ澄まされた感性に加え、頭脳明晰だと聞く。今まで培った経験を頭の中でデータ化し、無数の引き出しの中から瞬時に最適の選択を下しているのだろう。感性と努力。両方が高いレベルで備わっていなければ、長年にわたってハイレベルのスタート力を維持することは不可能なのだ。
競馬のスタートでも同じことが言える。ジョッキー時代に何度も経験したが、調子が良くて乗れている時はゲートが開く瞬間がハッキリと分かる。スターターがスタート台に上がり、各馬がゲートに収まる。最後に大外枠の馬がゲートに入るとゲート裏の発走委員が「前出ろー」と声を掛ける。その時に集中力は極限に達する。全馬の駐立を確認してスターターがスタートを切るとゲートが開く。その瞬間がまるでスローモーションのように感じるのだ。言葉では表現しにくいが、ゾーンに入った時はゲートが開くと同時に愛馬と呼吸を合わせて一緒に飛び出すことができる。ただ毎回ではない。うまくいかない時期もある。だからこそ約20年もナンバーワンのスタート力を誇っている菊地選手には脱帽するしかない。
特に勝負どころで彼が1号艇に入ると、オレはテンションが上がる。白い航跡が一直線に伸び、スタートラインをトップで切る。そして1Mを先マイ、華麗な逃げ。この電光石火のイン速攻劇を何度見たことか。とにかく彼のイン逃げはオレの脳裏に深く刻まれている。それだけ勝った時のインパクトが強く、見る者をほれぼれさせるのだと思う。
競馬でもボートレースでも、自分の本命がスタートで遅れると絶望的な気持ちになる。特に1Mで勝負が決する確率が高いボートレースにおいて、スタートは命といってもいいだろう。舟券に興じている身としては、とりあえずスタートを決めて1Mで勝負できる位置にいてほしい。それでもやられたら相手を褒めればいい。インでスタートを遅れて何もすることなく終わることは許されない。それが切なる願いだ。でも菊地選手は絶対に裏切らない。今回もきっちりスタートを決め、潰しに来る外枠勢を返り討ちにしてくれるはずだ。オレはそう信じ、彼のスタートと心中したい。













