先日、最新シングル「放浪かもめ」をリリースした美貴じゅん子(49)は異例のキャリアをたどってきた演歌歌手だ。1996年にデビューするも、全くと言っていいほど売れずに、2002年からはアルバイト生活に突入。それでもめげずに復活を目指し、今では細川たかし一門として活躍している。

 美貴は21年にリリースしたシングル「土下座」がスマッシュヒットした。

 ただ、ここに来るまでは苦難の道のりだった。96年にシングル「ほおずき」でテイチクからデビュー。その時は「10年くらいやっていけば、家の一軒くらい持てるのかな」と甘く考えていたが、キャンペーンで歌い続けても売れたCDが3枚という厳しい現実を味わった。

「デビューして4年目には、スタッフの方から新曲を出すたびに『これが最後だよ』と言われた」という。

 一向にヒットの兆しを見せず、02年を最後に新曲リリースがストップしてしまった。そこから銀座の日本料理店でのバイト生活が始まった。「新曲を出したい、歌いたい」と強く思っていたが、なかなかかなわず何度も心が折れかけた。

「この生活を知り合いに知られたくなくて、銀座でも裏通りを歩いた。店でも芸能関係の人には会わないようにしていた」

 12年に10年ぶりのシングルを発表するも、振るわなかった。

 現在の所属事務所社長と出会ったのが大きな転機となった。「2020年にデビュー25周年になったころ、社長とお会いして、いままでバイト生活を続けてきたことなどを話したんです。社長は、私がもうすぐ50歳になるし、1回ぐらい新曲を出させてあげてもいいんじゃないかと思ってくれたんじゃないかな」

着物姿の美貴じゅん子
着物姿の美貴じゅん子

 そこでリリースしたのがヒット曲の「土下座」だった。「タイトルにインパクトがあったので、いろいろな番組に呼んでいただきました。ある番組では徳光和夫さんに『よく辞めなかったね』って言われましたが、本当によく辞めなかったって思います。この曲で私の人生も大きく変わりました」

 昨年1月には遅ればせながら25周年パーティーを開催。「事務所社長の関係で細川たかしさんがパーティーに駆け付けてくれたんです。そのステージで細川一門に入門してもらうと発表されました。私にとっては本当にうれしいサプライズプレゼントでした」

 昨年行われた細川一門のコンサートにも彩青(りゅうせい)、田中あいみといった愛弟子とともに出演。「細川さんからは、腹筋より背筋を鍛えたらもっといい声が出ると言われ、会うたびに『背筋鍛えてるか』って言われます」と感謝しきり。

 見事に返り咲いた美貴の最新シングルが「放浪かもめ」だ。訳あり女性が流れ流れてたどり着いた小さな港町で居酒屋を開き、常連客から「かもめ」という愛称で呼ばれ、幸せな生活を送るが、一人ぼっちになると、昔のことを思い出してしまうという叙情的な歌だ。

 今年は日本作曲家協会から今後が期待される歌手に贈られる「日本作曲家協会奨励賞」を受賞した。「もちろん年末の大きな目標というのはありますが、有線放送で曲が流れたときに、“美貴じゅん子の声だ”と分かってもらえるような歌手になりたいです。『放浪かもめ』をみなさんに聴いてもらえるように。“かもめのじゅん子”と言われるようになりたいです」

“苦労人”美貴の快進撃は始まったばかりだ。

想いを届ける美貴じゅん子
想いを届ける美貴じゅん子

☆みき・じゅんこ 1973年11月7日、鹿児島県出身。96年にテイチクエンタテインメントからメジャーデビュー。2002年のシングル「姫折鶴」を最後に、新曲が出せなくなり、テイチクと契約切れ。21年に「土下座」をリリース、ヒットした。7月23日には新曲発売を記念した「美貴じゅん子 浴衣ライブ2023~放浪かもめの夏詩~」を東京・六本木クラップスで開催する。