2人の「天才」による究極の対談が実現した。ボートレース徳山「第33回グランドチャンピオン」(20日開幕)を直前に控え、ボートファン歴45年の元天才ジョッキー・田原成貴氏(64)が徳山ボートを訪問。その地元水面で2020年に引退した元ボートレーサーのレジェンド・今村豊氏(61)が出迎えた。競馬界&ボート界で伝説を築いた2人の天才は約30年ぶりに再会を果たし、互いの哲学と美学を語り合った。その一部をお届けする。

 田原 いやぁ、今村さんとこんなひとときを持てるなんて幸せです。

 今村 私もずーっと会いたかったんですよ。ホントにうれしいです。

 ――初めてレーサー今村豊を認識したのは

 田原 今村さんがデビューしてすぐ。当時「すごい選手が出た」って言われ、初めて生で見たのが住之江だったかな。いや~鮮烈でしたよ。とにかくターンが速かった。鮮明に覚えているのが1988年の多摩川ダービー。3号艇で5コースだったかな。絞りまくりではなく、外からシューッと。ああいうまくりは見たことなかった。先輩方にとっては脅威だったでしょう。えらいヤツが出て来たなって。

 今村 当時、田原さんはすでに競馬界で活躍していて、有名な騎手でした。ある日、阪神競馬場にお邪魔した時にお会いしたんですよね。

 田原 某スポーツ紙の記者から今村さんが来るって聞いて、僕は「会わせてくれ」と頼んでね。最終レース後に連れてきてもらった。ミーハーでしたね(笑い)。

 今村 いや、こっちがミーハーですよ。仲間に「田原さんとお会いできた」って自慢しました。

 ――2人は騎乗と乗艇に共通の美学がある

 田原 ボクはいつも後輩に「騎手の重心」と「馬の支点」の話をします。わずか針の一点ほど、そこを追求しろって。

 今村 分かります! ボートも重心がブレないことが一番大事。乗艇姿勢が悪い選手は常に舟が暴れる。姿勢がしっかりしていれば自然にハンドルを切れるし、レバーも好きなだけ握れます。だから競馬は必ず騎手を見ちゃう。馬の強い、弱いではなく、乗り方が奇麗な騎手を探しますね。

 田原 ボートも競馬も美しさを追求しないと技術は上がらないですよね。

 ――2人はデビュー当初から「天才」と言われ、どう感じていたか

 今村 天才と言われるのは本当にありがたいですが、私自身が天才と思ったことは一度もありません。例えば私が訓練もせずにデビューして1着を取ったり、大谷(翔平)選手が初めてボールを握って160キロを投げたら天才でしょう。でも、そんなことはあり得ない。みんな陰で並々ならぬ努力をしている。

 田原 僕は同期の中で一番、馬に乗っていた。もう時効ですが、競馬学校の時に夜中に馬を出して乗ったこともある。よくバレなかった(笑い)。騎乗技術に関しても究極を試したので、競馬学校時代は一番、落馬したんですよ。

 今村 私は本栖(研修所)時代、ターンマークのギリギリを回ろうとして一番、転覆していた。レースの合間はとにかく試運転に乗った。あるレース場では「おまえが来たら燃料がかさむ」って嫌みを言われましたけど…。

 田原 ハハハ、それを言われたら本望ですね。

 ――徳山グラチャンについて

 今村 5年ぶりに(地元の)徳山で開催するので、本音を言えば参加したかった(笑い)。

 田原 水面に今村さんの影を追いかけているファンはいっぱいいますよ。僕は数十年ぶりに徳山ボートに来ましたが、山々の景色は全然、変わっていないですね。選手目線から見た徳山ボートの1Mは?

 今村 1コーナー回った後のバックストレッチは日本一、広いんです。全速で回ってミスっても対岸にぶつかる怖さがないからガンガン攻められる。だから私は徳山のインが強いイメージがないんですよ。

 田原 では今大会は、恐れずガンガン攻める選手を狙いましょうか。

 ――最後に未来のボートレーサーへ

 田原 40年前、ボートレースに変革を起こし、今のボート界の礎をつくった人が、私の隣にいる。そんな選手がまた出て来てほしい。歴史ってたぶん大勢の人が変えるのではなく、たった一人が変えると思うんです。僕は齢64ですが、生きている間にもう一度「うわー、今村さんみたいな強烈な人が出てきた」っていうのを見たい。

 今村 田原さんの話を聞いて、私も死ぬまでに「こんなターンがあったのか!」っていうのを見たくなりましたね。

 田原 それを期待しましょう! 

 今村 はい、今日はありがとうございました!

☆対談全編の動画はユーチューブ「東スポレースチャンネル」で公開