ダンディーという言葉がぴったりな田村正和さんは若い時はニヒルなプレーボーイ、その後、コメディーや三枚目も演じた。そして、集大成と言えるのがドラマ「警部補・古畑任三郎」(1994~2008年)シリーズだった。

 古畑シリーズが終わったころ、田村さんは知人に〝田村の美学〟を語っていたという。

 ドラマ関係者は「田村さんは親しい役者に『俺は自分が思っている、そして見る人も思っている〝田村正和〟という役者を演じているんだ。だから、〝田村正和〟の美しい顔ができなくなったら役者を辞める。〝田村正和〟を演じられなくなったら俺は辞める。最近は、みんなが思っている〝田村正和〟ができなくなってきた』と言っていました」と明かす。

 そんな考え方だからこそ、プロとしてプライベートを極端に封印し、バラエティーに出ることはほとんどなかった。

 近年はドラマ、映画にほとんど出演しなくなり、一部メディアで「引退」とも報じられたが、本人は引退とは口にしていなかった。

「田村さんは『〝田村正和〟を演じてほしいというオファーなら受ける。おじいさんの役はやりたくない』とも話していました。醜態を見せたくないということでしょう。これ以上、もう〝役者・田村正和〟をできないなと分かった段階で、人知れずに身を引いていたんでしょう。〝田村正和〟が引退というのもかっこ悪いことなので、本人は引退とは口にしなかったんでしょう」と同関係者。

 最後の作品となったのは「眠狂四郎 The Final」(2018年)。報道陣の取材には「やりたいもの、できるものは、やり尽くした」と語っていた。