京都市にあるストリップ劇場「DX東寺」で20年以上も劇場ポスターを描いてきた“ストリップポスター絵師”の日田邦男さんが先日、心不全のため亡くなった。79歳だった。

 日田さんは日本最後のストリップポスター絵師だ。パソコンは使わず、大きな画用紙に蛍光絵の具を使って、筆で描く。風景写真などをカラーコピーしながらコラージュしていく。キャッチコピーはすべて自分で作っている。

 日田さんは1941年に大阪市西成区で生まれた。6人きょうだいの長男で独身だった。キャバレー王の福富太郎氏が経営していた「ハリウッド」の美術部や大阪の「梅田パレス」というキャバレーの企画部に在籍していたこともある。

 本紙は2016年、日田さんにインタビューをしていた。

「このような仕事に就いたのは、もう40年以上前のことになります。東寺に来たのは阪神大震災の後なので、もう20年以上前になりますね。香盤(踊り子の名前と出演順の一覧表)は10日ごとに変わるので、そのたび描いています。会場の照明係もやっているんですよ」

 ポスターを張り替える前の日、日田さんは、劇場にあるポスター室に泊まり込む。夜のうちに下地を作っておき、朝早く起きて一気に仕上げた。

 劇場がオープンするのは午前11時。ポスターが出来上がると、日田さんは開店前に入り口に置かれている大きなボードなどに張る。業務用のホチキスを使って各所を留めていくと、その最後に金色のテープで四片をマスキングする。金色のテープを貼ることで、ポスターは生き生きとしたものになる。

「朝になってから仕上げるのは理由があるんです。“その時”になると何とも言えないインスピレーションが湧いてくるんです。この仕事は、私の心の友ですね。いつまでも描き続けたいです!」

 DX東寺にある工房には、今でも日田さんが使っていたものが多数残されているという。