虎の3冠王を巡る〝仁義なき争奪戦〟は、ヤンキースが一歩リードか――。阪神・佐藤輝明内野手(27)の今オフのポスティングシステムによるメジャー移籍を19日、球団が正式に容認した。ドジャースなど複数球団の参戦が見込まれるが、注目は日本人スターの獲得で明暗を分けてきた両名門だ。ただ、戦力事情を見渡せば、虎の主砲を最も必要としているのはピンストライプ軍団かもしれない。
この日、兵庫・西宮市内の球団施設で会見した嶌村聡球団本部長は「阪神タイガースは佐藤輝明選手がかねて希望していました来シーズンからのMLBへの挑戦を後押しする事といたします」と発表。佐藤も球団を通じて「この度、自分の思いを尊重していただいた球団に、感謝しています」とコメントした。
球団初のリーグ連覇を達成した今季は打率3割6厘、39本塁打、106打点で3冠王を獲得。左の長距離砲であるだけでなく、三塁と右翼を守り、強肩も持ち味だ。メッツ、フィリーズ、パドレス、マリナーズなども獲得候補に挙がり、10球団以上の激しい争奪戦ぼっ発は必至とみられる。
中でも熱視線を送るのがヤンキースだ。米スポーツサイト「ファンサイデッド」では3年7500万ドル(約119億円)の契約予想も浮上。かつて松井秀喜、イチロー、黒田博樹ら日本人スターを次々と獲得した名門は、2014年の田中将大(現巨人)を最後に日本球界からの大物獲得が途絶えている。
17年オフはエンゼルスからFAとなった大谷翔平(現ドジャース)との面談にもこぎ着けられず、23年オフにはブライアン・キャッシュマンGM自ら視察した当時オリックスの山本由伸もドジャースにさらわれた。昨オフも村上宗隆(前ヤクルト)、岡本和真(前巨人)の獲得を見送り、それぞれホワイトソックス、ブルージェイズでの活躍を許した。実に29年近く現職に就くキャッシュマンGMも佐藤獲得に前のめりになっているとみられ、積年の雪辱を果たす意味で佐藤は格好のターゲットとなる。
しかも今回は実利がある。今季のヤンキースは三塁を主に守ったライアン・マクマーンが打率2割1分3厘、11本塁打と低迷。三塁の攻撃力向上は喫緊の課題だ。佐藤が三塁に定着できれば打線の厚みが増す上、外野の両翼にも回せる。右翼までの距離が短い本拠地ヤンキー・スタジアムも、左打者の佐藤には追い風となりそうだ。実現すれば、主砲アーロン・ジャッジとの〝日米大砲コンビ〟結成も夢ではない。
一方、ドジャースも侮れない。大谷、山本、佐々木朗希と日本球界の大物を次々と手中に収め、今や「日本人スター帝国」を築いた。ブルワーズに4連敗したリーグ優勝決定シリーズでは打線が沈黙。佐藤の加入は長距離砲の上積みだけでなく、高齢化が進む主力野手陣の世代交代にもつながる。三塁、外野をこなせる点も起用の幅を広げる魅力だ。
ただし、ドジャースには〝席〟の問題がある。三塁には来季も契約を残すマックス・マンシーが健在。外野にもカイル・タッカーら実力者がそろい、一塁はフレディ・フリーマン、指名打者は大谷が占める。佐藤を主力として迎えるには、既存戦力との配置転換が避けられない。
対照的にヤンキースは補強ポイントと佐藤の持ち味が合致する。三塁守備のメジャー適応には見極めが必要とはいえ、獲得への本気度では一歩優勢とも映る。
嶌村本部長は「本当に球団としては非常に誇りに思っています。ぜひ頑張っていただきたい」とエール。ビッグマネーも実績もあるドジャースに対し、具体的な補強の〝空席〟を示せるヤンキース。日本人スター獲得で続いた連敗に終止符を打つ条件は、今度こそ整いつつあるようだ。












