ゴーストライターの作曲、聴覚障害の詐病疑惑で渦中の“偽ベートーベン”佐村河内守氏(50)が18日までに、身体障害者手帳を交付した横浜市の担当者と面会し、医師の再診察を受けることに同意した。謝罪文で「3年くらい前から回復していた」と認めていた同氏の本当の聴力が判明することになる。一方、同氏の創作力への疑問を月刊誌で指摘した音楽評論家で指揮者の野口剛夫氏(49=東京フルトヴェングラー研究会代表)が、東スポの取材に一連の騒動をブッタ斬った。

 横浜市が18日の記者会見で明らかにしたのは、佐村河内氏が担当者と面会し、市の指定する耳鼻科医の再診察を受けることに同氏が同意したというもの。

 市は聴覚の回復状況などが確認されれば、佐村河内氏が交付されている身体障害者手帳(聴覚障害としては最も重い2級)の返納などの措置を取る方針だという。

 佐村河内氏は12日、楽曲が別人の作品だった問題をめぐって謝罪文を公表。「3年くらい前から言葉が聞き取れる時もあるまで回復していました」と直筆の文書で明らかにし、身体障害者手帳については「専門家の検査で問題があると判定されれば返納する」との意思を記していた。

 同じ文書では「近いうちに必ず公の場で謝罪をさせていただきます」とも表明していたが、15日には佐村河内氏の代理人を務めていた弁護士が「今後の方針に関し、意見の違いが生じたため、代理人を辞任した」と表明。謝罪会見のめどはいまだ立っていない。

 そんななか、佐村河内氏の疑惑をいち早く報じた野口氏が騒動を振り返った。昨年10月に月刊誌「新潮45」で「本物か」と題した記事を執筆した野口氏は「自分の主張が認められたのはうれしいけど、私は他人の間違い探しをやっただけ。音楽業界にとっては情けない事件」と複雑な表情を浮かべる。

 そもそも「交響曲第1番<HIROSHIMA>」自体も、専門家が聞けば“駄作”だという。

「第一印象は正直、なんて安っぽい曲なんだと思いました。他の作曲家、たとえばモーツァルト、バッハ、ショスタコービッチとかから拝借しているように聞こえた。絵でたとえれば、ピカソ、ゴッホとかの作風からちょこちょこ拝借し、1枚の絵の中に混ぜ込んだ感じというんですかね。自分の作品じゃなく、人の作品のいいところをつまみ食いしているような音楽だと思いました」

 ただでさえゴーストライターの作品なのに、専門家の鋭い目で“パクリ”と酷評されれば、目も当てられない。

 返す刀で「ベートーベンは自分に厳しく、真実を追求した曲を書いた人。だから、最初からうそをついていた佐村河内氏は絶対に“反ベートーベン”です。ベートーべンに失礼」と切り捨てた。

 ファンがだまされた理由については、一部メディアの責任を糾弾した。昨年3月31日放送のNHKスペシャル、同4月26日放送のTBS系「中居正広の金曜日のスマたちへ」など一部マスコミが「あやしげな人物を祭り上げてしまった。本物かどうかきちんと見定めないと危険」と“第2の佐村河内騒動”の再発防止を要求。

「『全聾(ろう)』『ベートーベン』とかイメージに惑わされないで、ちゃんと音楽を聞き、彼の本(著書)を読めば分かることです」と冷静な対応を求めた。

 そもそも野口氏の“告発記事”も当初、日の目を見ない可能性もあったという。

「初めから『新潮45』に掲載しようと思ったわけではない。音楽専門誌に載せようとしたが、レコード会社の広告も載せる都合上、(野口氏の記事は)載せづらかったようで断られた。たまたま『新潮45』の編集者の目に留まった。でなければお蔵入りだったかもしれない」と明かした。

 佐村河内氏の再診察結果と謝罪会見の行方が注目される。