女優の若村麻由美(52)らが22日、都内で行われた映画「一粒の麦 荻野吟子の生涯」(山田火砂子監督、今秋公開予定)の製作発表会見(現代ぷろだくしょん主催)に出席した。国学者の塙保己一、実業家の渋沢栄一と並ぶ埼玉県三大偉人の一人で、日本初の女医で女性運動に尽くした荻野吟子の生涯を描く。
主演の若村は「明治時代、命をかけて頑張った女性を演じられて光栄。時を超えて闘いながら生きていく人の壮絶なる生きざまを、映画の中にとどめられたら。今を生きる人たちへの応援歌として、作品を次の元号に送り出し、たくさんの人の心の糧になることを願っている」とコメント。
また、山田監督作品3度目の出演となる渡辺梓(50)は「監督の熱い思いに若村さんら魅力的な役者が引き寄せられる。私も関わらせていただけて幸せ。若村さんのファンなので、ミーハー的な意味で共演が楽しみ」と語った。
そして、山田監督は「日本人は皆、マザー・テレサは知っているが、日本のマザー・テレサ、石井筆子さん(障害者福祉の第一人者)は知らない。だから、以前、彼女を紹介する映画を撮り、道徳の教科書に取り上げられるに至った。荻野さんの人生もこれだけ立派なのに、あまり知られていないのが悔しい。ぜひとも教科書になってくれないかな、と頑張って映画を作る」と意気込んだ。
続けて「戦後教育の中で、昔、修身の本に載っていたようなわが国の偉人が忘れ去られている。敗戦後、歴史に埋もれてしまった人を発掘して取り上げるのが私の仕事。新藤兼人監督(享年100)より一つでも多く生きて、これからも映画を作りたい」と話した。
メガホンを執るきっかけは、東京医大などで発覚した男女差別の不正入試事件だという。荻野は17歳で嫁いだが、夫から淋病をうつされて子供が産めなくなり離縁に至った。当時、女性医師は皆無で、治療のたびに屈辱を感じて一念発起。苦学を重ねて34歳で日本で初めて医師の国家資格を取得した。
山田監督は「日本ではいまだに明治時代のような男尊女卑が残っている。これを是正してもらいたい。子育てを誰もフォローしないから、医師を辞める女医が出る。改善して女性が医師を続ける制度を確立させてほしい。それと、作品を見た女性に強くなってもらい、政治の世界で社会を変えてもらいたい」と主張した。
ところで、埼玉といえば映画「翔んで埼玉」が大ヒット中。特に地元での動員がすさまじく、話題になっている。山田監督は「こんな立派な人を輩出する埼玉県を見直している。ダサイタマなんかじゃない。もちろん、翔んで埼玉のことは知っているし、埼玉での動員を狙っている」と笑みを浮かべた。ジャンルは全く違うものの、空前の埼玉ブームに乗れるか?
作品は4月にクランクインし、埼玉県熊谷市、深谷市などでロケを行う。
会見には山本耕史(42)、山口馬木也(46)、綿引勝彦(73)らも出席。ほかに賀来千香子(57)、佐野史郎(64)らも出演する。