アベノマスク配布をめぐって“忖度合戦”が勃発か!? 大量に余って多額の保管費用がかかっているアベノマスクが大問題となっている中、15日に政府は希望する自治体や個人に配布する方針を示した。欲しがる人なんていそうもないアベノマスクだが、地方自治体関係者は「地方にとってはプレッシャーです。忖度が行われることでしょう」と頭を抱えた。

 アベノマスクは安倍晋三元首相時代にマスク不足が深刻になったため、その対策として各世帯や介護施設などに配られた布マスクのことだ。当初から「効果があるのか」と不評だったのだが、今では約8000万枚以上の在庫が倉庫の“肥やし”となっており、昨年8月から今年3月の保管費用が約6億円に上るなど問題視されていた。

 松野博一官房長官は15日の会見で「災害備蓄や地域住民への配布などで活用していただく」と希望する自治体への配布を進めるとした。さらに自治体だけでなく希望する個人へも配布するともいう。

 個人への配布について厚労省の担当者は「制度設計を今しているところです。準備でき次第、配布となります。できるだけ早くと考えています」と急ピッチで作業中だと話した。「配送料は国が負担します。配布は一定数以上、何枚からという形を考えています」(前出担当者)。保管しても配ってもお金がかかるとは厄介なことこの上ない。

 あんなに不評だったアベノマスクを欲しいと思う人がどれだけいるのかは謎だが、自治体の場合は個人と違う事情があるという。

 某地方自治体の関係者は「これは地方にとってはプレッシャーですよ。アベノマスク配布をどれだけ希望したかで首相官邸との距離が如実に出ますからね。少なすぎて官邸に目を付けられる可能性もあり、欲しくないのに『欲しい!』と言わないといけない“忖度競争”が起きそうです」と嘆いた。

 そうはいっても多くの自治体にとってアベノマスクは積極的に欲しいものではない。「マスクの備蓄は大切ですが、今となっては不織布マスクがあるので、備蓄も不織布マスクにしますよね。保管だけでもお金がかかりますし。そもそもコロナ禍で自治体にはマスクの寄付が多く、断っているところもあるくらいです」(前出の関係者)

 手を挙げる自治体はあるのか。政界関係者は「アベノマスクの生みの親である安倍晋三元首相の地元である山口県内の自治体はさすがに手を挙げるのでは? そうしないと安倍氏に恥をかかせることになるというか、安倍氏に批判が向きかねないですよね」と指摘した。

 また、岸田文雄首相の地元である広島県内の自治体にもプレッシャーがかかりそうだという。「裏で官邸から『頼むよ』と声をかけられる自治体もあるでしょう。岸田氏の地元なんてそうじゃないですか。やっぱり岸田氏に恥はかかせられないですよね」(前出の関係者)

 要らないのに欲しいと言わないといけないとしたら、つらすぎる。全国の自治体で不毛な忖度合戦が繰り広げられるのかもしれない。