10月31日に投開票された衆院選で、日本維新の会が公示前の11議席から41議席と大幅に議席を増やした。

 地盤の大阪では、候補者を立てた15選挙区すべてを〝制圧〟。対立候補の比例復活を許したのも2選挙区だけという圧倒的勝利で、10区では立憲民主党の辻元清美氏をも粉砕した。

 なぜここまで躍進したのか? 松井一郎代表や吉村洋文副代表は選挙期間中、何度も「改革」を強調した。親密な関係だった安倍・菅政権から、「分配」を掲げる岸田政権に代わった自民党との対決色を鮮明する一方で、野党共闘で手を組んだ立憲民主党や共産党を猛批判。無党派層の受け皿として票を取り込んだ。

 一方で自民党支持者からは、自民党の〝自爆〟を指摘する声も聞かれた。

「安倍さんや菅さんはここ数年、補完勢力として維新をアシストし続けた。いざ選挙になって、『これはヤバい』と安倍晋三さんも応援に来とったけど今さら。14区の長尾敬さんなんかは保守論者の人たちも応援しとったけど、こんな事態になったのは、安倍さんや菅義偉さんが維新を放置しすぎたせいやのに、誰もそこを批判せーへんのは不思議や」

 維新が大幅に議席を伸ばしたもう一つの要因として、吉村氏のメディア露出効果も大きい。

 事情を知る関係者は「コロナ対策で吉村さんがテレビに出まくると話題になっていましたが、関西の民放は知事や市長をコメンテーター代わりに使う傾向がある。わざわざ専門家を探す必要がないので重宝します。取材記者にとっても、維新は基本的に毎日、『質問がなくなるまで』とカメラ付きで取材対応するので、首長の取材を記事にするのが仕事だと勘違いしている記者さえいる。それで記事が書けてしまうので、事務方への取材をおろそかにしていることも多く、コツコツと人脈を作ることもない。これは東京では考えられないこと」と指摘する。

 安倍・菅政権が維新と仲良くしている間に、維新は自民以上に街の声に耳を傾け、府内各地の自治体の首長や議会の多数を占めた。そこに、民放各社が阪神タイガースばりの扱いでヨイショし続けた。少なくとも関西では、選挙前に勝負は付いていたと言えそうだ。