大ヒット映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が1月27日から韓国でも公開され、観客動員150万人を突破したという。韓国内で「鬼滅の刃」といえば、主人公・竈門炭治郎の耳飾りの模様が旭日旗を連想させるとして物議を醸していた。韓国の市民団体などが「右翼映画」だと抗議し、韓国での上映や配信では耳飾りのデザインを修整したほどだ。何でもイチャモンをつけてくる韓国だが、それでもヒット。どうやら、最近の世論は変わってきたようだ。

 韓国紙「朝鮮日報」によると、韓国で公開された日本のアニメ映画の観客動員数1位は「君の名は。」(約373万人)、2位は「ハウルの動く城」(約301万人)、3位は「千と千尋の神隠し」(約200万人)、4位は「崖の上のポニョ」(約151万人)だという。「鬼滅の刃」が歴代4位以上になるのは確実だろう。

 韓国で「鬼滅の刃」は「大正時代という設定は植民地支配が始まった時期と重なる」「耳飾りが旭日旗だ」などと批判されていたのにヒットしている。朝鮮日報の日本語電子版は1日、ヒットについて「観客たちは『戦闘シーンはアニメの中で最高ではないかと思う』『絶対に後悔しない』『演出もよいし、よくなかった点はない』『作画、映像美、ストーリー、どれも最高だ』など、高く評価している」と報じている。

 さらに先日の同紙の韓国語電子版では、耳飾りの問題に触れつつも、「最近、続いた反日運動に無理に合わせて、日本の作品は無条件に右翼だと見るのは行き過ぎた解釈だ」という意見を紹介している。

 いったいどうなっているのか。アニメと韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏はこう語る。

「はっきり言って、韓国で毎度騒いでいるのは少数の大学教授やマスコミで、アニメファンはもはやそれに踊らされていないということでしょう」

 日本のアニメは海外でも人気だが、その表現に関して物議を醸すことはあった。欧米などでは、たとえそれが悪役であってもナチスを連想させるキャラクターは問題視される傾向にある。

「『マジンガーZ』のブロッケン伯爵や『キン肉マン』のブロッケンマンがそうでした。この両者はどうにかぎりぎりセーフだったようですが。感動の名作『みなしごハッチ』でさえ、フランスでは、幼児にいらぬ心理的圧迫を加えるという理由で、セールスに苦労したといいます」と但馬氏。

 もっとも韓国の日本アニメに対する毎度の物言いは、それらのケースとはまったく質を異にした、単なる言いがかりといえるだろう。名作映画「火垂るの墓」でさえ、韓国では「戦争加害国である日本が被害者ぶるための極右思想アニメ」という理由で、一般公開解禁まで20年以上かかったほどだ。

「『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎の耳飾りが旭日旗に見えるから、修整するというのもナンセンスです。もういい加減、そんな子供じみた反日論難には飽き飽きしたというのが、近頃の韓国の若者の本音でしょう。特にオタク、アニメファンというのは情報に敏感で唯我独尊のところがありますから、マスコミの扇動を冷ややかに見ている人も少なくないのです。また、オタクほどオリジナルにこだわる性質があります。日本版オリジナルのDVDが発売されれば、そちらに飛びつくでしょう」(但馬氏)

 現在、韓国では日本語で動画配信するユーチューバーも増えている。

 但馬氏は「彼らはむろんのこと親日的で、歴史認識などに関しても割とニュートラルな見方を持っている若者が多いです。彼らが韓国社会の中枢を担う時代になったら、もしかしたらあの国を覆う対日感情も潮目が変わるかもしれません」と指摘している。