【リリィ(名塚佳織)「Wonderland」】

 この夏のアニソン界は、もうAdoが全部話題をさらっていった感じがする。映画「ONE PIECE FILM RED」の歌姫・ウタ役として「新世界」をはじめとする劇中歌を軒並みチャートに送り込んだ。

 ウタ役といっても、Adoが担当したのは歌唱のみで、セリフなどを演じたのは声優の名塚佳織。いわゆるダブルキャストというやつだ。声優が自ら歌わず、歌唱をシンガーに任せたことで、もしかすると「この声優さんは歌はあまり得意ではないのかも?」と思った人もいるのではないだろうか。いやいやとんでもない、名塚佳織はちゃんと歌える声優である。

 なにしろ子役時代からミュージカルなどの舞台に出演し、声優の仕事がメーンになってからもこれまでにキャラクターソングを中心に数十曲のアニソンを発表している。

 数があまりに多いのでどの曲を紹介しようか迷ったが、今回は2017年放送の「18if」で第1話のエンディングに流れた「Wonderland」をピックアップしよう。「18if」は夢世界を舞台にしたアニメで、名塚が演じたのは主人公だけに見える謎の少女・リリィ。この曲はリリィとして歌ったキャラクターソングだ。

 声優はキャラクターに応じてさまざまな声を使い分けて役を演じる。キャラソンも“その声”で歌わなければならないという縛りがある分、普通に歌うより難しいかもしれない。弾むようなエレポップ調の「Wonderland」は、まさに作中のリリィがキュートに歌った良質のキャラソンだった。

 このところセリフは声優、歌唱部分はシンガー(特にネット系の歌い手)というパターンが増えており、一種の流行にもなっている。それはそれで確実に効果的なキャスティングではあるが、名塚佳織が歌う「新世界」もちょっと聴いてみたい気がする。