オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに、現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げていく。第37回は「オカムロ様」だ。

 今から数十年前にあった昭和末期の体験である。母方は霊感が強く、父方は霊感がないという血筋の人物がいた。この人物は、どちらかというと父親に似て霊感がない方だった。それゆえ、同級生と一緒に学校にて心霊雑誌や心霊本を読んだ後、それらの本を家に持って帰るのが嫌だった友人たちから、「お前、霊感ないからいいだろう」という理由で押し付けられていた。

 そんなことから自分の部屋の中には怖い雑誌や心霊写真があふれていた。その中には、「オカムロ様」という現代妖怪の記事があった。その話とは、オカムロ様からドアや窓をノックされたら、ある呪文を唱えないと首を切られるというものだった。

 その夜、不気味なことに自分の部屋の窓が「コンコン」と実際にノックされた。自分の部屋は道路に面しているが、道路を歩いても足音が分かるくらい静かな場所である。「気のせいだろう」と気にしないでいたが、またしても「コンコン」とノックの音が聞こえた。

「これはいけない」と思い、すぐさま妖怪を撃退する呪文を唱えた。それは「オカムロ オカムロ オカムロ」というものであった。この話を知った者のところには、妖怪そのものが訪問するという定番モチーフの話である。

 この話は、妖怪話を聞く行為そのものが妖怪現象になっているのだ。