未確認生物の中でも海に出る「シーサーペント」などの場合は、目撃者らが乗っていた船の名前などが有名になるケースも多い。軍艦や客船、潜水艦などの名前が目撃証言とひも付けて報告されるためだろうか。

 中には非常に有名な船に関わった人物が未確認生物を目撃していた、というケースも存在している。

 1907年4月26日、英国・リバプールから米国・ニューヨーク間を就航していた定期客船カンパニア号の船員たちが奇妙な生物を目撃した。その生物は非常に巨大なプレシオサウルスに似た長い首を持つ生物で、波間から尖塔のように大きな首を出していたという。首の長さは3メートルほど、悠々と船の横を過ぎていったそうだ。

 チーフオフィサー(一等航海士)のアーサー・ロストロン氏は当時、英紙デーリー・メールのインタビューに「2つの突起が頭頂部にありましたが、目が確認できませんでした。首の大きさと比較して、耳は非常に小さいか、ないように思えました」と語っている。

 彼は自分が目撃した生物のスケッチを残しており、そこにはカタツムリを思わせるような小さな突起が2つ生えた生物の頭部を書き記している。

 もちろん、この事件は当時の世間や海軍、定期客船の所属していた海運会社で相当な騒ぎになったようで、ロストロン氏は本当に怪物を見たのか何度も会社の上司や軍、警察に確認されたと回顧録で語っている。

 なお、興味深いことに、ロストロン氏が目撃した1〜2日後、シーサーペントが目撃された場所から200マイルほど離れた地点で、漁師が「皮膚のたるんだ不気味な巨大怪物」と遭遇し、船をひっくり返されたと報告していた。

 目撃・遭遇した日時も位置も大幅に離れていないため、同一の怪物と遭遇したのではないかと考えられ、かなり信ぴょう性の高いシーサーペントの目撃例の一つと言われている。

 さて、このシーサーペントを目撃したロストロン氏は、後に歴史的な海難事故の関係者の一人となる。

 1912年4月14日深夜、ある豪華客船が北大西洋上で氷山に接触、沈没した。有名なタイタニック号沈没事故である。氷山と接触したタイタニック号は遭難信号を発信した。受信して応答し、現場に急行できたのは客船カルパチア号だった。

 このカルパチア号の船長を務めていたのが、ロストロン氏だったのである。カルパチア号は遭難信号の受信から約2時間後の午前4時に遭難地点に到着、706人を救助した。ロストロン氏はこの功績により、アメリカ合衆国議会より議会名誉黄金勲章が授与されている。