前回のUMA図鑑320回では江戸・明治の人々も研究していた未確認生物「落斯馬(らしま)」について紹介した。この「落斯馬」の画像は江戸時代の文献「長崎聞見録」に掲載されていたものなのだが、実はこの掲載箇所を見開きで見ると驚きの生物が姿を現す。

 ページいっぱいに描かれた、全身を鱗に覆われた巨大な怪物。まさしく映画に出てくる怪獣のようだ。

 この生物の名前は「ラガル」。大きさはおよそ二丈(約6メートル)。全身を覆うウロコは硬く、ヤリや刀、矢でも突き通すことができない。爪も歯も鋭く、のこぎりのようで、普段は海の中にいて魚を襲っているが、陸に上がった時は獣や人も襲うという。

 説明を読むと、怪獣を思わせるが、少し大きさは小さいし、弱点も存在する。普段、海の中に生息しているためか、陸に上がった時は動きが鈍いとか、腹の部分はウロコが軟らかいとされている。

 また、体内はさすがに軟らかいので、この生物の腹の中に自ら飛び込んで内臓を食い破る小動物も存在しているのだとか。

 この生物はどうやら日本に生息しているのではなく、海外にすむ生物の話を伝聞で書き記したものらしい。ポルトガル語でトカゲのことを「ラガルト」と呼ぶため、ここからきたものではないかと考えられている。

 特徴を挙げていくと、どう猛な怪物のように見えるが、大きなトカゲにすぎないような描写もあるため、東南アジアの大きなミズトカゲあたりが伝聞とともに怪物のように姿が変化していき、日本にも伝わったものではないだろうか。