フランスで17日、物価高や公共サービスの悪化に抗議する大規模デモが行われ、内務省発表で約55万人が参加した。9月に始まった高校生による教育環境の改善を求める抗議運動に、労働組合や市民団体、かつての「黄色いベスト運動」の参加者らが合流。全国約110か所に広がった。一方、中部リモージュでは覆面集団が市庁舎を襲撃して放火。築143年の歴史的建造物が大きく損壊する事態となった。一体どこまで拡大するのか。

 抗議運動が始まったのは9月21日。学校の予算不足や老朽化した施設、教職員不足、過密な教室など、教育環境の悪化に不満を募らせた高校生たちが立ち上がった。10月13日には第5弾の全国デモが行われ、内務省発表で約16万1500人が参加した。

大規模なデモで破壊された車両(ロイター)
大規模なデモで破壊された車両(ロイター)

 さらに17日には、生活費高騰や公共サービスの悪化に抗議する全国的なデモに高校生らも加わり、労働組合や市民団体などと合流。異なる要求を掲げる人々が「生活防衛」などを共通の目的として結びつき、参加者は約55万人に膨れ上がった。主催者側は約80万人が参加したとしている。

 多くの参加者は平和的にデモを行ったが、一部では放火や略奪、警察との衝突が発生。各地で約1200人が拘束され、警察官と憲兵隊員計約150人が負傷した。

 中部リモージュでは、デモに便乗したとみられる覆面集団約50人が市庁舎を襲撃した。地元紙「ル・ポピュレール・デュ・サントル」などによると、集団は17日午後6時ごろ、市庁舎の扉を強行突破。窓ガラスを割って侵入し、建物内に火を放った。炎は屋根にまで燃え広がり、鐘楼が崩落した。市内では警察車両が炎上し、商店の略奪も相次いだ。ゲラン市長は襲撃者をアナキストや極左過激派などと非難したが、実行犯の身元や所属、動機は明らかになっていない。

 ルコルニュ首相は、暴動の背景に極左勢力などが関与しているとの見方を示し、「暴力を容認する政治的な行動だ」と非難。一方、マクロン大統領は「われわれの共和国に暴力の居場所はない。建物を破壊し、県庁や商店を襲撃し、市庁舎まで略奪した者たちは訴追され、処罰される」と声明を出した。

 大規模デモは、さらなる政治的混乱を招くのか。欧州事情に詳しい関係者は「当初は教育環境の改善を求める高校生が中心でしたが、今や異なる階層の不満が結びつき、より広範な社会的不満を表現する運動に変わってきました。リモージュでは市庁舎が放火され、マルセイユでも市庁舎への侵入が発生。暴力の標的が公権力の象徴に向かっています。今後、運動がさらに拡大し、政権打倒を掲げる勢力が結集すれば、革命を連想させる事態に発展する可能性も否定できません」と指摘する。

 仏紙ル・モンドは、マクロン大統領と若者の間で対立が深まっていると分析している。高校生らの抗議に労働者や一般市民の不満が結びつき、全国規模の運動が長期化すれば、政権への圧力は一段と強まりそうだ。17日の55万人規模の動員が今後も続くのか。革命の歴史を持つフランスで、新たな社会的大混乱の火種がくすぶっている。