【プロレス蔵出し写真館】11月7日、都内でプロフェッショナルレスリング藤原組の35周年イベントの開催が決まり、組長の藤原喜明、船木誠勝、鈴木みのる、冨宅飛駈、高橋義生が出演する。
さて、今から34年前の1992年(平成4年)4月19日、東京体育館で藤原組の「旗揚げ1周年記念興行」が開催された。メインイベントは船木誠勝の初の異種格闘技戦。相手は4階級制覇を達成したプロボクサー、〝石の拳(こぶし)〟ロベルト・デュランだった。
デュランは日本ボクシング界にもなじみがあり、ノンタイトル戦で小林弘、WBA世界ライト級王座防衛戦でガッツ石松、高山将孝を破っていた。中量級を支えた世界ボクシング史に残る強豪で、41歳になっていたとはいえ通算成績は94戦86勝(62KO)9敗というすさまじいレコードを誇っていた。
正式に対戦が発表されたのは、藤原組の米国決戦が行われた同年3月20日の米フロリダ州マイアミ大会の試合前。藤原が立ち会い、2人揃って会見した。
船木は当時を振り返り「異種格闘技戦はやりたかった。やっぱり猪木さん、前田(日明)さんに並びたかったから。ボクサーという発想も猪木アリの影響です」と語る。
アントニオ猪木VSモハメド・アリ戦は、現代の総合格闘技の礎となったといわれる〝世紀のスーパーファイト〟(76年6月26日、日本武道館)だ。影響を受けたのはUWFインターンナショナルの高田延彦もそうだった。
高田は91年12月22日、両国大会でボクシング元WBC世界ヘビー級王者、トレバー・バービックと対決したが、10月30日、米ニューヨークで行われた調印式では、76年3月25日にやはりニューヨークで調印式を行った猪木アリを模倣するように羽織袴姿で登場していた。
船木VSデュラン戦は3分10ラウンド休憩1分のルールで行われた。観客が首をかしげたのはデュランがTシャツとロングタイツ姿だったこと。1年のブランクがあり、3か月で調整したという体は太め残りで腹はポッコリ出て〝妊娠腹〟と揶揄された。一方、船木は都内のジムでミドル級ボクサーを相手に苦しいスパーリングをこなしていただけに、無駄な肉を削ぎ落とし、胸や腕、そして腹には〝鋼鉄の鎧〟を身にまとっていた。
試合は1Rからデュランが軽くジャブを繰り出すが、船木は華麗にやり過ごす。ボディーへの右ストレートも両手で巧みにブロックする。船木は右足を取って倒し、上から攻めるもレフェリーはカウントを数え始めた。グラウンドは10秒と制限されていた。2R、船木はノーガードで顔を突き出してデュランを挑発。左足を取って倒し、スタンドのアンクルホールドを決めたまま後ろに倒れてアキレス腱固めを狙った。デュランも反撃して、左ボディーを決めてダウンを奪った。
3R開始前、デュランはTシャツを脱いだ。パンチのスピードが増した印象だ。船木は素早く両足タックルを決め、ひねって倒した。素早くヘッドロックに捕らえて、同時にデュランの右腕を両足でロックする。デュランはアッという間にギブアップ。船木が3R1分31秒、腕固めで勝利した。
試合後、デュランは再戦をアピールしたが船木は、「次来るとき体重落として来い、コラ!」と吐き捨てた。
船木は自身のユーチューブでこの行為を悔いていた。
「今思い返してデュランさんの人柄が良かったと思います。断ることもできたと思います。これだけキャリアがある人であれば断ることも可能だった。『キックは禁止にしてグラウンドは10秒だけにしてくれればやる』と。心が広いなと。最後マイクまでしてくれて。それに対して自分は22歳。突っ張ってますね。『次来るときは体重落として来い』。20も年上に向かって。4階級制覇、偉大な人間に対して。業界が違うといっても今から考えるとホント失礼なこと言ったなと思ってしまいます。すいませんでしたホントに」。そう謝罪した。
そして「今思えば生涯、初の異種格闘技戦でデュランさんと試合ができてラッキーだったなと思っています。とにもかくにもこの一戦で、知らない格闘家と戦うことに目覚めてしまった」と語った。
さて、実は船木には第2次UWFの晩年、東京ドームでの異種格闘技戦が浮上していた。相手は、デュランとライバル関係にあった世界5階級制覇のプロボクサー、シュガー・レイ・レナードだ。
船木は「自分が神(真慈)社長から言われたのは90年12月のUWF松本大会の後だったと思います。その時は辞めるのが決まっていて、『もしも残っていたら、次の東京ドームでレナードとの異種格闘技戦を考えていた』と言われました。やったとすれば翌91年になると思います。どこまで本当の話かわかりません」と明かした。
UWFは前田と神社長の対立が表面化して修復不能となった。12月1日の長野・松本大会を最後に3派(Uインター、藤原組、リングス)に分裂した。UWFが存続していれば船木VSレナードの異種格闘技戦が実現していたかもしれない(敬称略)。【プロレス蔵出し写真館】の記事をもっと見る













