裁判ウオッチャーのお笑い芸人・阿曽山大噴火(あそざんだいふんか)が新刊「元大蔵官僚、『ブス!』と叫んで被告人になる」(徳間書店)を今月28日に発売する。週刊誌「アサヒ芸能」で連載していた高齢者の“暴走裁判”をまとめたものだ。7日には国指定の難病「多系統萎縮症」と診断されたことを公表したばかり。このほど取材に応じ、新刊を紹介するとともに自身の現在の病状を明かした。

 同書は、週に5日裁判所通いを続ける阿曽山による、高齢者犯罪の実態をリポートしたリアル法廷ドキュメント。ある老人はぶっ飛んだ言い訳で裁判官をあきれさせ、また別の老人は逆ギレして自己肯定に終始する。

 阿曽山が高齢者の裁判を意識するようになったのは約20年前で「当時は80歳の被告人は珍しかったんです。今はそんなに珍しくない。全体的に年齢が上がっているということですかね」。

 阿曽山が注目するのは、法廷で交わされる裁判官や検察官、弁護士、被告人のやりとりだ。

 特に印象に残っているものの一つが、92歳の被告人による無免許運転を巡る裁判。家族が隠していたカギを被告人が探し出して無免許で運転してしまうのだが、その裁判で検察官、弁護人、情状証人として出廷した孫が証言することで、現在隠しているカギの場所を明かしてしまったという。

「被告人を目の前に、堂々と鍵のありかを教えているというやりとりが面白かった」

 傍聴するようになったきっかけはオウム真理教関連の裁判だった。そこで見聞きした話が芸人の活動につながっていく。
「ライブの後に一発ギャグやエピソードトークをすることがあるんですけど、裁判の話をするとウケたんです」

 それがやがて連載につながり、裁判ウオッチャーとしての地位を確立していった。

 そんな阿曽山が国指定の難病「多系統萎縮症」だと明かしたのは今月7日のこと。

 脳や脊髄の神経細胞が徐々に変性・消失していくもので言語障害や運動機能障害などの症状が現れる。根本的な治療法は確立されておらず、日本では約1万人が闘病しているとされる。

 阿曽山が異変を感じ始めたのは約2年前。「ラジオなどで話す際、ろれつが回りにくくなったり、言葉をかみやすくなったりした」

 複数の医療機関で検査を重ね、最終的に国の研究施設で多系統萎縮症と判明した。

「今は走れないですね。ただ、普段の生活で走ることって、そんなにない。電車に乗り遅れそうなときや、信号が点滅しているときくらいですから」

 それでも日常生活で不便を感じる場面は増えている。例えば、階段は手すりがないと上れない。映画館でも座席まで階段を上がる際、手すりがないため一苦労だ。

「座席を手すり代わりにすればいいのですが、人が座っていたらなかなか手をかけられない。人が座っている座席の前を、すり抜けるのも難しい」

 治療の見通しが立ったわけではなく、今後どのような症状が出るのかも含め、不確かな部分は多いという。

「今後、何か異常が出てくるようなら、薬も、となるようです」

 ろれつが回らない中、現在もCBCラジオ「北野誠のズバリ」にレギュラー出演している。

「10分ほどの電話での出演ですが、考えて話さなければならないので、医者からはリハビリになるって言われています」

 また裁判傍聴では、メモ書きは欠かせないが「字がすごい下手になった。後から読めなくなるときもあるので、原稿はすぐ書きたいですね」と話す。長年、法廷で被告人や裁判官の言葉に耳を傾け、人間模様を記録してきた阿曽山。これからも、自身の体に起きた変化と向き合いながら、活動を続けていく。