熱戦を展開してきた小倉ナイターGⅠ「第64回競輪祭」は最終日の27日、12Rで決勝戦(V賞金4147万円=副賞含む)を行い、新山響平(29=青森)が2角番手まくりで優勝。5回目のGⅠファイナル挑戦でついに初戴冠を果たすとともに、ラスト1枚の切符だった「KEIRINグランプリ2022」(12月30日、平塚)の出場権を獲得した。

 競輪祭というお祭りはあまりに華やかで、また残酷さを背負う。大逆転の優勝でグランプリの切符をつかみ取った新山響平という男がいて、敗者がいる。

「優勝したいっていう思いを伝えて、新田(祐大)さんの番手を回らせてもらった。自分にもプレッシャーをかけて、絶対に取るしかない、と」

 ヒーローに喜びの表情はなく、声も静か。うれしさよりも去来するものは、昨年の自分の姿だったか。もう少しでつかめそうだった切符が最後の最後にこぼれ落ち、準優勝に終わったのは1年前。そのレースは「忘れられない」と今でも話す。

 戦い力尽きた戦士たちへのためか、新山が表情を隠す一方で、マスク越しの顔面を崩して笑っていたのは、北日本の仲間たち。「キョーへー、カッコつけんなよ!」「キョウヘ~、泣くなよ~!」。誰よりも〝北のために〟で戦ってきたことは揺るがない。何度も壁にはね返され、特に今年は目指していたパリ五輪の道も途絶え、苦しみばかりだった。

 歓喜を閉じ込める英雄を、みなが温かくたたえた。同期の阿部拓真(32=宮城)は「泣くかと思ったけど…。(競輪学校で)ゴールデンキャップを取れなかった時、泣いてたのに」とつぶやいた。

 そこにいるのは鬼と化した1人の競輪選手。「勝因はラインのおかげ、のみ。グランプリに向けてしっかり準備したい。ラインにお世話になりっぱなしなので」。その言葉が意味するものを、12月30日の平塚競輪場で見せられるか。