漫画家・水島新司さんが亡くなった。小学校3年生のクリスマスの朝、起きたら枕元に「ドカベン15巻」が置いてあって以来〝水島ワールド〟にはまった世代にとっては、思い出がたくさんありすぎる。

 多くのプロ野球選手が「ドカベンで野球のルールを学んだ」とコメントしているように、当時の野球少年たちにとっては〝バイブル〟のような存在だった。

 草野球でファウルチップが真後ろに飛ぶと「ファウルが真後ろに飛ぶということは、タイミングは合っている」という「じっちゃん」(山田太郎の祖父)の言葉を決まって思い出したものだし、いわき東の緒方のように鉄アレイのボール部分を人さし指と中指ではさんでフォークの練習もした。横浜学院・土門のようにゴムまりをつかっての握力強化にも日々取り組んだ。わびすけの「両投げ用グラブ」を持っている友人はクラスのヒーローだった。バントでホームランを打つことができた「燃えろ!プロ野球」というファミコンゲームでは、バントの際に「賀間!」と叫んだっけ。

 センターを守っている明訓キャプテンの山岡が何でもないゴロをトンネルした場面は、定岡正二さんの鹿児島実業が1974年の夏の甲子園・準決勝で防府商にサヨナラ負けしたシーンの再現だったことを後から知った時は「おおーっ」と思ったものだった。

 明訓―ブルートレイン学園戦ではランニングホームランになりそうな打球に対し、山岡がグラブを投げて「打球に対しグラブを投げたら三塁打ルール」を結果的に狙いにいく場面があるのだが、結局はランニングホームランとなってしまい「走者はアウトを賭して次の塁(本塁)を狙ってもよいのだ」との審判の解説には「なるほど!」と思った。

 なかでも有名なのは「ルールブックの盲点」のエピソードだろうか。スクイズバントの小フライを白新の剛腕投手・不知火がダイビングキャッチ。一塁走者の山田が飛び出していたため一塁に送球してスリーアウトとなるのだが、山田がアウトになる前に三塁走者の岩鬼が飛び出したままホームへ。本来なら三塁に送球して岩鬼をアウトにしなければならず、白新が「第3アウトの置き換え」をしなかったため、ありえない得点が認められてしまった。

 このプレーを実際に再現して話題となったのが、2012年夏の甲子園の済々黌。「第3アウトの置き換え」は、その後人気漫画「ラストイニング」の彩珠学院―聖母学苑戦などでも描かれている。